定款の事業目的はたくさん必要?融資や許認可で有利になる最適な書き方を解説

会社設立にあたり、定款の事業目的はたくさん書くべきか、それとも絞るべきか悩んでいませんか。

結論から言うと、事業目的はむやみに多く記載すれば良いわけではなく、将来の事業計画と許認可の要件を考慮し、適切な数に絞り込むことが重要です。

この記事では、事業目的をたくさん書くメリット・デメリットを比較し、日本政策金融公庫などの融資審査や、建設業・古物商などの許認可申請で有利になる最適な書き方を具体例と共に解説します。

自社の信用度を高め、スムーズな事業運営を実現するためのポイントがわかります。

会社の憲法ともいえる定款。
その中でも「事業目的」は、会社がどのような事業を行うのかを内外に示す重要な項目です。

会社設立時には「とりあえず主要な事業だけ書いておけば良いのでは?」と考えがちですが、将来を見据えて事業目的をある程度たくさん記載しておくことには、無視できないメリットが存在します。

ここでは、事業目的を多めに記載することで得られる2つの大きなメリットについて、具体的に解説します。

将来の事業拡大に柔軟に対応できる

会社を設立する際に最も大きなメリットとして挙げられるのが、将来的に事業を拡大する際の柔軟性が格段に高まることです。

会社は、定款に記載された事業目的の範囲内でしか事業を行うことができません。

もし、定款に記載のない新規事業を始めたい場合、その都度、事業目的の追加手続きが必要になります。

事業目的の追加には、主に以下の手続きと費用が発生します。

  • 株主総会での特別決議
  • 法務局への変更登記申請
  • 登録免許税:3万円

この手続きは、時間もコストもかかります。

ビジネスチャンスはいつ訪れるか分かりません。
「今だ!」というタイミングで新規事業に乗り出そうとしても、登記変更が完了するまで待たなければならず、機会を逃してしまう可能性があります。

あらかじめ将来展開する可能性のある事業を定款に盛り込んでおけば、事業目的を追加するたびに発生する手間とコストを削減でき、スピーディーな事業展開が可能になります

例えば、最初はWebサイト制作事業だけでも、将来的に関連する広告運用代行やシステム開発、ECサイト運営コンサルティングなどを手掛ける可能性があるなら、設立時にこれらを記載しておくのが賢明です。

項目事業目的をあらかじめ記載した場合新規事業の都度、目的を追加する場合
手続き不要(すぐに事業を開始できる)株主総会の特別決議、登記申請が必要
費用0円登録免許税3万円(1回の申請ごと)
時間即時登記申請から完了まで1~2週間程度
ビジネスチャンス逃さず迅速に対応可能手続き中に機会を損失するリスクあり

対外的な信用度が向上する可能性がある

定款の事業目的は、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得すれば誰でも確認できます。

これは、金融機関が融資審査を行う際や、企業が新規取引を開始する際の与信調査などで必ずチェックされるポイントです。

事業目的が多岐にわたって記載されていると、単一の事業だけでなく、関連事業への展開も見据えた計画性のある会社だと評価されることがあります。

しっかりとした事業計画のもと、将来的な成長戦略を描いているというポジティブな印象を与え、結果として対外的な信用度向上につながる可能性があるのです。

例えば、融資を申し込む際に、メイン事業が思うように進まなかった場合のリスクヘッジとして他の事業が記載されていれば、金融機関の担当者に「この会社は多角的な視点で経営を考えている」と安心感を与える一助となるかもしれません。

ただし、あまりにも脈絡のない事業目的を無秩序に羅列すると、かえって「事業内容が不明確」「何がしたいのか分からない会社」というマイナスの印象を与えかねません。

あくまで、自社のコア事業と関連性があり、将来的に展開する蓋然性の高い事業を記載することが、信用度向上というメリットを最大限に活かす鍵となります。

将来の事業拡大を見越して、定款の事業目的に多くの項目を記載しておく戦略は一見すると有効に思えます。

しかし、その一方でいくつかの無視できないデメリットや注意点が存在します。

安易に事業目的を増やしすぎると、かえって会社の信用や手続き面で不利になる可能性もあるため、リスクを正しく理解しておくことが重要です。

ここでは、事業目的をたくさん書くことの具体的なデメリットについて詳しく解説します。

会社の事業内容が分かりにくくなる

定款の事業目的は、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)にも記載される、いわば「会社の公式プロフィール」です。

ここに関連性の薄い事業が多数羅列されていると、取引先や金融機関などの第三者から見て「この会社は一体何をしている会社なのか」という本業が非常に分かりにくくなります

例えば、Web制作会社を設立したにもかかわらず、事業目的に「飲食店の経営」「不動産の賃貸及び管理」「古物の売買」「職業紹介事業」といった項目が脈絡なく並んでいると、会社のコア事業が何であるか判断できません。

その結果、取引の開始を躊躇されたり、専門性を疑われたりする可能性があります。

許認可申請で不利になる場合がある

建設業や古物商、飲食業など、事業を行うために国や都道府県からの「許認可」が必要な業種があります。

これらの許認可を申請する際、行政庁は定款の事業目的を確認し、申請者がその事業を適切に行う意思と体制があるかを審査します。

このとき、申請する許認可と全く関係のない事業目的が多数記載されていると、主たる事業が不明確であると判断され、審査に悪影響を及ぼすことがあります。

担当官によっては、事業の実態を疑い、追加の資料提出を求められたり、最悪の場合、許認可が下りなかったりするケースも考えられます。

許認可の取得を計画している事業については、その目的に集中した記載が求められます。

専門性が低いと見なされるリスク

事業目的をあまりにも手広く記載すると、外部から「器用貧乏」な印象を与え、専門性を疑われるリスクがあります。

特に、高度な知識や技術力が求められるコンサルティング業やIT関連事業、クリエイティブ系の事業などでは、このデメリットは顕著に現れます。

顧客やパートナー企業は、その分野のプロフェッショナルとしてあなたの会社に仕事を依頼します。

しかし、登記情報に多種多様な事業が記載されていると、「どの事業も中途半端なのではないか」「本当にこの分野に精通しているのか」といった疑念を抱かせることになりかねません。

これは、企業のブランドイメージを構築していく上でもマイナスに作用する可能性があります。

特定の分野で「専門家」としての地位を確立したいのであれば、事業目的はむしろ絞り込む方が戦略的に有効と言えるでしょう。

会社の設立時や事業拡大時に多くの経営者が利用を検討するのが、金融機関からの融資です。

特に創業融資では、まだ実績のない会社の将来性や返済能力を判断するため、提出書類が厳しくチェックされます。

その中でも「定款の事業目的」は、金融機関が会社の事業内容を把握するための重要な基礎情報となり、融資審査の結果を左右することもあります。

事業目的を単にたくさん羅列するだけでは、かえって審査に不利に働くケースも少なくありません。

ここでは、融資審査、特に創業者にとって重要な日本政策金融公庫の融資を有利に進めるための事業目的の書き方を解説します。

事業の具体性と実現可能性を示す

金融機関が融資審査で最も重視するのは、「貸したお金が事業に使われ、その事業から生み出された利益によってきちんと返済されるか」という点です。

そのため、事業目的には「どのような事業で収益を上げるのか」が誰にでも明確にわかる具体性が求められます。

例えば、「コンサルティング事業」という記載だけでは、何の専門家で、どのような顧客にサービスを提供するのかが全く分かりません。

これでは融資担当者も事業の将来性を判断できず、審査が難航する可能性があります。

事業目的は、融資の際に提出する「創業計画書」や「事業計画書」と一貫している必要があります。

計画書で詳細なビジネスモデルを説明しても、その根拠となる定款の事業目的が曖昧では説得力がありません。

以下に、抽象的な記載例と具体性を高めた記載例を比較します。

抽象的な記載例(避けるべき例)具体性のある記載例(推奨される例)
ITサービス事業中小企業向けクラウド会計ソフトの導入支援及び運用サポート事業
飲食店の経営オーガニック食材を使用したカフェの経営及び関連商品の販売
コンサルティング業Webマーケティング戦略の立案および実行支援に関するコンサルティング業

また、「実現可能性」を示すことも重要です。代表者のこれまでの経歴やスキルと関連性の薄い事業ばかりを多数記載していると、「本当にこの事業をすべて実現できるのか」と計画性に疑問を持たれる可能性があります。

まずは融資を希望するメイン事業と、それに関連する事業に絞って具体的に記載することが、融資担当者からの信頼を得るための第一歩です。

日本政策金融公庫の融資制度と事業目的

これから事業を始める創業者にとって、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は非常に重要な選択肢の一つです。

民間の金融機関に比べて創業者への融資に積極的であり、多くの起業家が活用しています。

日本政策金融公庫の審査では、提出する「創業計画書」の内容が極めて重要視されます

創業計画書には、事業内容、取扱商品・サービス、セールスポイント、必要な資金と調達方法などを詳細に記載しますが、この内容と定款の事業目的に整合性がなければなりません。

審査担当者は、定款の事業目的と創業計画書を照らし合わせ、申請者の事業計画の妥当性や本気度を判断します。

例えば、創業計画書では「Webサイト制作事業」で融資を申請しているにもかかわらず、定款の事業目的の1番目に「飲食店の経営」と書かれ、「Webサイト制作」に関する記載が下の方に申し訳程度に書かれていたらどうでしょうか。

担当者は「本当にWebサイト制作がメイン事業なのか?計画がぶれているのではないか?」と不安を抱くかもしれません。

融資を成功させるためには、以下の点を意識して事業目的を記載することが効果的です。

  • 融資を受けたいメイン事業を事業目的の最初に記載する
    会社の顔となる最も重要な事業であることをアピールできます。
  • 創業計画書に記載する事業内容を、具体的に事業目的に反映させる
    計画との一貫性を示し、事業の具体性を補強します。
  • 関連性の低い事業をむやみに含めない
    特に創業融資においては、まずはこれから始める事業に集中している姿勢を見せることが信頼につながります。将来的にやりたい事業は、事業が軌道に乗ってから追加することも可能です。

融資審査における事業目的は、単なる手続き上の項目ではありません。

自社の事業内容を的確に伝え、事業計画の実現可能性を裏付けるための重要なプレゼンテーションツールであると認識し、戦略的に作成しましょう。

会社を設立して特定の事業を行う際、法律に基づいて国や地方公共団体から「許認可」を得なければならない場合があります。

例えば、建設業、古物商、飲食業、不動産業などがこれに該当します。

許認可を申請する行政庁は、その会社が定款で定めた事業目的の範囲内で事業を行おうとしているかを確認します。

そのため、将来的に許認可が必要な事業を行う計画がある場合は、会社設立時の定款作成段階で、その事業目的を正確に記載しておくことが非常に重要です。

もし定款に記載がなければ、許認可の申請自体が受理されません。後から事業目的を追加することも可能ですが、株主総会の特別決議や法務局での変更登記手続きが必要となり、時間と費用(登録免許税3万円)がかかってしまいます。

スムーズな事業開始のためにも、許認可を見据えた事業目的の記載は欠かせないポイントです。

許認可ごとに定められた文言を入れる

許認可を必要とする事業では、単に事業内容を記載するだけでなく、許認可を出す行政庁が求める特定の文言や表現を事業目的に含める必要があります

これは、その会社が当該法令を遵守して事業を行う意思があることを示すためです。

「リサイクルショップの経営」といった一般的な表現では認められず、「古物営業法に基づく古物商」といった法律に基づいた正確な記載が求められるケースが少なくありません。

どの文言が必要かは、取得したい許認可の種類や管轄の行政庁によって異なります。

そのため、事業計画の段階で、どの許認可が必要になるかを洗い出し、必ず事前に管轄の行政庁(都道府県の担当課、保健所、警察署など)のウェブサイトを確認したり、直接問い合わせたりして、必要な文言を確認しておきましょう。

建設業許可の場合の事業目的記載例

建設業を営むには、軽微な工事を除き、元請・下請を問わず建設業法に基づく「建設業許可」が必要です。

建設業許可は29種類の業種に分かれており、定款の事業目的には、許可を取得したい業種名が具体的に記載されている必要があります。

ポイント事業目的の記載例
許可が下りやすい具体的な記載・土木工事業、建築工事業
・とび、土工工事業
・電気工事業管工事業
・内装仕上工事業
・建設工事の設計、施工、監理及び請負
注意が必要な抽象的な記載・建設業
・建築に関する一切の業務
・リフォーム業

※これらの表現では、どの業種の許可を申請するのか不明確なため、認められない可能性があります。

古物商許可の場合の事業目的記載例

中古品(古物)の売買や交換、レンタルなどを行う「古物商」を営むには、都道府県の公安委員会(窓口は管轄の警察署)から「古物商許可」を得る必要があります。

インターネットでの中古品売買も対象となります。

定款の事業目的には、古物営業法に準拠した事業であることが明確にわかる文言が求められます。

ポイント事業目的の記載例
許可が下りやすい具体的な記載・古物営業法に基づく古物商
・古物営業法による古物の売買、交換及びその委託販売
・中古自動車の売買及び輸出入
注意が必要な抽象的な記載・中古品の販売
・リサイクルショップの経営
・古着の販売

※これらの表現は一般的すぎて、古物営業法に基づく事業であることが明確でないため、差し戻されるリスクがあります。

飲食業許可の場合の事業目的記載例

レストラン、カフェ、居酒屋などの飲食店を経営するには、食品衛生法に基づき、管轄の保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。

事業目的には、どのような形態で飲食業を営むのかがわかるような記載が望ましいです。

ポイント事業目的の記載例
一般的で分かりやすい記載・飲食店の経営
・喫茶店の経営
・レストラン、バー及びカフェの経営
・パン、菓子の製造及び販売
将来の展開も考慮した記載・食料品の販売
・弁当の製造、宅配及び販売
・酒類の販売
・ケータリングサービス業

※テイクアウトやデリバリー、ECサイトでの食品販売、お酒の提供などを将来的に考えている場合は、関連する事業目的もあらかじめ含めておくと、事業拡大の際にスムーズです。

定款に記載する事業目的は、将来の事業展開を見据えて自由に設定できると思われがちですが、実は会社法などで定められた3つの基本ルールを満たす必要があります。

これらのルールは、会社の設立登記をスムーズに進め、社会的な信用を得るための土台となります。

登記官が審査する際や、金融機関・取引先が会社を評価する際の重要な判断基準にもなるため、必ず押さえておきましょう。

具体的には、「適法性」「営利性」「明確性」という3つの原則を守る必要があります。

以下でそれぞれの内容を詳しく解説します。

適法性

事業目的の第一のルールは「適法性」です。

これは、事業の内容が法律に違反しておらず、公序良俗に反していないことを意味します。

当たり前のことのように聞こえますが、登記申請において非常に重要なポイントです。

例えば、以下のような事業目的は適法性が認められず、登記することはできません。

  • 殺傷能力のある武器の製造、販売
  • 詐欺、窃盗、強盗などの犯罪行為
  • 違法な薬物の密売
  • 賭博場の運営
  • その他、法律で禁止されている行為全般

また、直接的に法律で禁止されていなくても、「愛人バンクの経営」のように社会の倫理観や道徳に著しく反する「公序良俗」に反する事業も認められません。

適法性を満たさない事業目的を記載した場合、法務局での登記申請は受理されず、会社を設立すること自体ができなくなってしまいます。

営利性

次に求められるのが「営利性」です。株式会社や合同会社といった会社形態は、事業活動を通じて利益を生み出し、その利益を株主や社員(出資者)に分配することを目的とする「営利法人」です。

そのため、定款に記載する事業目的も、利益を追求する活動でなければなりません

したがって、「寄付活動」や「ボランティア活動」といった非営利活動のみを事業目的として掲げることは、原則として認められません。

これらの活動は社会的に意義深いものですが、会社の本来の目的である利益追求とは異なるためです。

ただし、営利事業の傍らで社会貢献活動(CSR活動)を行うことは何ら問題ありません。

例えば、「当社の事業で得た利益の一部を環境保護団体へ寄付する」といった規定を定款に盛り込むことは可能です。

重要なのは、あくまで会社の主たる活動が利益を生み出すものである、ということです。

明確性

3つ目のルールは「明確性」です。

これは、事業目的が、誰が読んでもその事業内容を具体的に理解できる言葉で記載されていることを指します。

登記官はもちろん、融資を検討する金融機関の担当者や、これから取引を始めるかもしれない取引先など、第三者が見て「この会社は何をしている会社なのか」がはっきりと分かる必要があります。

曖昧な表現や一般的すぎる言葉は、会社の専門性を伝えられないだけでなく、登記官の判断によっては登記が認められない可能性もあります。

例えば、「サービス業」や「物販」といった表現では、具体的にどのようなサービスや商品を扱っているのか全く分かりません。

事業目的の明確性を高めるためには、以下のように具体的な言葉で表現することが重要です。

不明確な記載例(悪い例)明確な記載例(良い例)
コンサルティング事業中小企業を対象とした経営戦略及びマーケティングに関するコンサルティング
IT関連事業ウェブサイトの企画、制作、保守及び運営
物品販売業インターネットを利用した衣料品、雑貨の通信販売
代行サービス高齢者向け買い物代行及び家事代行サービス

どのような言葉で表現すれば良いか迷った場合は、総務省が定める「日本標準産業分類」を参考にすると、登記で通りやすい具体的な表現を見つけやすくなります。

明確な事業目的は、会社の信用を高め、円滑な事業運営の第一歩となります。

会社の成長や事業環境の変化に伴い、設立当初に定めた事業目的以外のビジネスに挑戦したくなることもあるでしょう。

定款に記載した事業目的は、会社設立後でも追加、変更、削除が可能です。

ただし、そのためには法律で定められた正式な手続きを踏む必要があります。

ここでは、事業目的を変更するための具体的な手順を解説します。

株主総会の特別決議が必要

事業目的の変更は、会社の根本規則である定款を変更する行為にあたります。

そのため、会社の最高意思決定機関である株主総会での決議が不可欠です。

定款変更には、通常の決議(普通決議)よりも可決要件が厳しい「特別決議」が必要となります。

特別決議とは、議決権を行使できる株主の過半数が出席した株主総会において、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする決議です。

これは、事業目的の変更が会社の経営方針に重大な影響を与えるため、より慎重な意思決定を求める趣旨に基づいています。

株主総会で事業目的の変更が承認されたら、その証明として「株主総会議事録」を作成し、適切に保管しておく必要があります。

この議事録は、後の法務局での登記申請に必須の書類となります。

法務局での変更登記申請

株主総会で定款の変更を決議しただけでは、手続きは完了しません。

その変更内容を法務局に届け出て、会社の登記情報を更新する「変更登記申請」を行う必要があります。

この登記を完了させることで、変更した事業目的が公的に認められ、第三者に対しても効力を持つようになります。

変更登記申請は、株主総会で決議した日から2週間以内に、会社の本店所在地を管轄する法務局で行わなければなりません。

期限を過ぎてしまうと過料(罰金)の対象となる可能性があるため、速やかに手続きを進めましょう。

変更登記申請には、主に以下の書類が必要となります。

必要書類概要
株式会社変更登記申請書法務局のウェブサイトでテンプレートを入手できます。変更内容を記載して作成します。
株主総会議事録事業目的の変更を特別決議で可決したことを証明する書類です。
株主リスト株主総会時点での株主の氏名、住所、株式数、議決権数を記載した書類です。
委任状手続きを司法書士などの代理人に依頼する場合に必要となります。

また、変更登記申請には費用がかかります。

法務局に納める「登録免許税」として、1回の申請につき30,000円が必要です。

この費用は、事業目的を1つ追加する場合でも、複数追加・変更する場合でも同額です。

手続きを司法書士に依頼する場合は、別途数万円程度の報酬が発生します。

このように、事業目的の変更には法的な手続きと費用が伴います。

そのため、会社設立時に将来の事業展開をある程度見越して事業目的を記載しておくことが、後々の手間やコストを削減する上で重要になると言えるでしょう。

定款の事業目的は、将来性を見据えて多く記載するメリットがある一方、事業内容が不明確になり、融資や許認可で不利になるデメリットも存在します。

結論として、事業目的は単に多ければ良いというわけではありません。

日本政策金融公庫などからの融資や、建設業・古物商といった許認可を考慮する場合、事業の具体性を示し、定められた文言を正確に記載することが極めて重要です。

事業目的の変更には手間と費用がかかるため、会社設立の段階で自社の現状と将来像を慎重に検討し、最適な内容を記載しましょう。