【会社設立】資本金を現物出資で調達する具体的な方法と5つの注意点

会社設立を考えているものの、資本金としてまとまった現金を用意するのが難しいとお悩みではありませんか。
そんなときに有効なのが、現金以外の資産で資本金を調達する「現物出資」です。

この記事では、現物出資の仕組みやメリット・デメリット、具体的な手続きの流れを初心者にも分かりやすく解説します。

成功の鍵となる「財産の適正な価額評価」や「税務上の取り扱い」など、必ず押さえるべき5つの注意点も網羅しているため、読了後にはスムーズに会社設立準備を進められるようになります。

会社を設立する際、事業の元手となる「資本金」を用意する必要があります。

この資本金は、一般的に現金で払い込む「金銭出資」をイメージする方が多いでしょう。

しかし、会社法では現金以外の「モノ」や「権利」を資本金として出資することも認められています。
これを「現物出資(げんぶつしゅっし)」と呼びます。

ここでは、会社設立の選択肢を広げる現物出資の基本的な仕組みと、金銭出資との違いについて、メリット・デメリットを交えながら分かりやすく解説します。

現物出資の定義と仕組み

現物出資とは、会社の発起人(会社を設立する人)が、現金(金銭)の代わりに、不動産、自動車、パソコン、有価証券といった現物財産を出資し、その対価として株式の交付を受ける制度です。
つまり、手元にある資産を金銭に換えることなく、そのまま会社の資本金に組み入れることができます。

仕組みはシンプルです。

まず、出資する財産の価値を評価し、その評価額を資本金の額として定款に記載します。
そして、会社設立後にその財産の名義を個人から設立した法人へ変更することで、出資が完了します。
これにより、会社は設立当初から事業に必要な資産を所有した状態でスタートを切ることが可能になります。

現金が不足していても、事業に活用できる資産さえあれば起業の道が開けるため、特にスタートアップや個人事業主からの法人成りにおいて非常に有効な手段といえるでしょう。

金銭出資にはない現物出資のメリットとデメリット

現物出資は便利な制度ですが、金銭出資と比較すると手続きが複雑になるなどの側面もあります。

どちらの方法がご自身の状況に適しているか判断するために、メリットとデメリットを正しく理解しておくことが重要です。

まずは、両者の違いを比較表で確認してみましょう。

比較項目現物出資金銭出資
出資する財産モノや権利(PC、車、不動産、有価証券など)現金
手元資金の必要性少なくても可能(資産があれば良い)払込額分の現金が必須
手続きの複雑さやや複雑(財産評価、調査報告書の作成など)シンプル(口座への振込のみ)
設立後の事業準備出資した資産をすぐに事業で使える設立後に現金で資産を購入する必要がある

現物出資の3つのメリット

現物出資には、金銭出資にはない独自のメリットが3つあります。

  1. 手元に現金がなくても会社を設立できる
    現物出資の最大のメリットは、自己資金が乏しくても、事業に必要な資産を持っていれば起業できる点です。
    例えば、高性能なパソコンや業務用ソフトウェア、事業用の自動車などをすでに所有している場合、それらを現物出資することで資本金を確保できます。
    これにより、資金調達のハードルが大きく下がり、起業のチャンスが広がります。
  2. 会社の信用力を高められる
    資本金の額は、会社の規模や体力を示す指標の一つであり、金融機関からの融資審査や取引先との与信調査において重要な判断材料となります。
    現物出資を活用すれば、手元の現金額以上に資本金を大きく見せることが可能です。
    例えば、現金100万円しかなくても、評価額400万円の不動産を現物出資すれば、資本金500万円の会社として登記でき、対外的な信用力を高める効果が期待できます
  3. 設立後すぐに事業を開始できる
    事業運営に不可欠な設備や備品を現物出資することで、会社設立後にそれらを買い揃える手間や時間を節約できます。
    設立登記が完了した時点で、会社は事業に必要な資産を所有している状態になるため、すぐに営業活動を開始でき、スピーディーな事業展開が可能になります。
    これは、ビジネスチャンスを逃さない上で大きなアドバンテージです。

現物出資の2つのデメリット

一方で、現物出資には慎重に検討すべきデメリットも存在します。

  1. 手続きが複雑で時間がかかる
    金銭出資が「発起人の口座に資本金を振り込む」だけで完了するのに対し、現物出資は手続きが煩雑です。
    定款への詳細な記載事項の決定、財産の価額評価、財産引継書の作成、調査報告書の準備など、金銭出資にはない多くのステップを踏む必要があり、時間と手間がかかります
    司法書士などの専門家に依頼する場合でも、その分費用が上乗せされることになります。
  2. 財産の価額評価が難しい・費用がかかる場合がある
    現物出資する財産の価額は、客観的な時価に基づいて適正に評価しなければなりません。
    この評価が不当に高いと、後々追加の支払い義務(填補責任)が生じるリスクがあります。
    また、出資財産の評価額の合計が500万円を超える場合、原則として裁判所が選任する「検査役」による調査が必要となります。
    この調査には数十万円単位の費用と数ヶ月の期間を要することがあり、設立スケジュールやコストに大きな影響を与えます。

会社設立時の資本金は、現金で払い込む「金銭出資」が一般的ですが、現金以外の「モノ」や「権利」で出資する「現物出資」も可能です。

現物出資できる資産は、会社に譲渡可能で、かつ貸借対照表に資産として計上できる価値のあるものに限られます。

具体的にどのようなものが対象になるのか、代表的な資産を3つのカテゴリーに分けて詳しく解説します。

パソコンや車などの動産

動産とは、土地や建物といった不動産以外の有形財産全般を指します。

事業を始めるにあたって必要となる多くの備品がこれに該当し、現物出資として活用しやすい資産です。

特に、個人事業主から法人成りする場合、すでに事業で使用している資産を引き継ぐケースでよく利用されます。

現物出資の対象となる動産の具体例は以下の通りです。

資産の分類具体例評価におけるポイント
車両運搬具営業車、トラック、バイクなど中古車市場の相場や、購入後の経過年数に応じた減価償却を考慮して評価します。ローンの残債がないことが原則です。
工具・器具・備品パソコン、モニター、プリンター、サーバー、業務用ソフトウェア、デスク、椅子、応接セット、電話機など新品であれば購入価格、中古品であれば市場価格や減価償却後の帳簿価額を参考に、適正な時価を算出します。
機械装置製造業における工作機械、印刷業における印刷機など専門性が高いため、同等の中古品の市場価格を調査したり、専門家による鑑定が必要になったりする場合があります。
商品・製品販売目的で保有している在庫商品や、製造した製品など原則として仕入原価(取得価額)で評価します。ただし、市場価値が著しく下落している場合は時価での評価が必要です。

これらの動産を現物出資する際は、その資産が本当に事業に必要なものであること、そしてその評価額が客観的に見て妥当であることが重要です。

不当に高く評価すると、後の税務調査で指摘されたり、追加の責任を負ったりするリスクがあるため注意が必要です。

土地や建物などの不動産

事務所や店舗、倉庫として利用する土地や建物といった不動産も、現物出資の対象となります。

不動産は一般的に資産価値が高いため、現物出資することで資本金を大幅に増強できる可能性があります。

ただし、不動産の現物出資には特有の手続きや注意点が存在します。

  • 所有権移転登記が必要:不動産を現物出資する場合、法務局で発起人(出資者)個人から設立する会社へ所有権を移転するための登記手続きが必須です。
  • 高額な費用が発生:登記手続きに伴い、登録免許税(固定資産税評価額の2%)や、司法書士への報酬が発生します。また、会社側には不動産取得税も課税されます。
  • 評価額が高額になりやすい:不動産の評価額は数百万円から数千万円になることも珍しくありません。評価額が500万円を超えると、原則として裁判所が選任する「検査役」による調査が必要となり、手続きが複雑化し、時間と費用が余計にかかる可能性があります。

これらの手続きや費用を考慮すると、不動産の現物出資は慎重に検討する必要があります。

特に、検査役の調査を避けるために、不動産鑑定士による鑑定評価証明書を取得したり、税理士による価額証明を受けたりする方法もありますが、いずれも専門家への依頼費用が発生します。

株式などの有価証券や知的財産権

目に見える有形資産だけでなく、株式や特許権のような無形の財産も現物出資の対象となります。

これらは事業の競争力やブランド価値に直結する重要な資産となり得ます。

有価証券

国債、社債、投資信託、株式などが該当します。評価方法は証券の種類によって異なります。

  • 上場株式:証券取引所で日々価格が公開されているため、出資時点の市場価格(時価)を基準に評価します。客観的な評価が比較的容易です。
  • 非上場株式:市場価格がないため、評価が非常に複雑になります。会社の純資産額や収益性、類似業種の株価などを基に専門的な手法で株価を算定する必要があり、公認会計士や税理士などの専門家による評価が不可欠です。

知的財産権

特許権や商標権など、法律で保護された権利も価値のある資産として現物出資が可能です。
ソフトウェアやWebサイトなども、著作権として現物出資の対象になり得ます。

権利の種類具体例
特許権・実用新案権独自の技術や発明、考案
意匠権製品の独自のデザイン
商標権会社名、商品名、ロゴマーク
著作権自社で開発したソフトウェア、Webサイトのデザインやコンテンツ、プログラムコード

知的財産権は、その権利がもたらす将来の収益性を予測して価値を評価するため、非常に専門的な知識が求められます。
そのため、弁理士や公認会計士といった専門家に評価を依頼するのが一般的です。

その他の資産

上記以外にも、取引先に対する売掛金などの「金銭債権」も現物出資の対象となります。
ただし、その債権の回収可能性を客観的に証明する必要があります。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金を現物出資で調達する場合、金銭出資とは異なる特有の手続きが必要です。

特に、定款への記載や財産の価額評価が重要なポイントとなります。

ここでは、株式会社を設立するケースを例に、現物出資を利用するための具体的な方法と手続きの流れを4つのステップに分けて詳しく解説します。

ステップ1 定款への記載事項を決定する

現物出資を行う場合、まず会社の憲法ともいえる「定款」に、法律で定められた事項を記載しなければなりません。

これは「変態設立事項」と呼ばれ、金銭以外の財産が出資されることによる価額の不確定性から、会社財産の確保と他の株主を保護するために定められています。
この記載がなければ、現物出資の効力は認められません。

具体的には、会社法第28条に基づき、以下の項目を定款に記載し、公証役場で認証を受ける必要があります。

記載事項内容の詳細
現物出資をする者の氏名又は名称誰が現物出資を行うのかを特定します。個人の場合は氏名、法人の場合はその名称を記載します。
出資の目的である財産どの財産を出資するのかを具体的に記載します。例えば、パソコンであればメーカー、型番、製造番号まで特定できるように詳しく記述します。
その財産の価額出資する財産の評価額を金銭で記載します。この価額の妥当性が後のステップで重要になります。
割り当てる設立時発行株式の数現物出資の見返りとして、出資者に何株の株式を割り当てるのかを記載します。

これらの項目を正確に定款へ記載することが、現物出資手続きの第一歩となります。

ステップ2 現物出資する財産の価額を評価する

定款に記載した財産の価額が本当に妥当であるかを確認する手続きが「価額の評価」です。

会社の資本を過大に評価することを防ぐため、原則として、裁判所が選任した検査役による調査が必要とされています。

しかし、検査役の調査は時間と費用がかかるため、実務上は以下の例外規定を利用するのが一般的です。

これらの要件を満たせば、検査役の調査は不要となります。

検査役の調査が不要となるケース要件と概要
価額の合計が500万円以下の場合定款に記載された現物出資財産の価額の合計額が500万円を超えないケースです。多くのスタートアップ企業で利用される最も一般的な方法です。
市場価格のある有価証券の場合証券取引所の相場がある株式などの有価証券で、定款に記載する価額がその市場価格を超えない場合です。
専門家の証明がある場合現物出資財産の価額について、弁護士、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人から価額が相当であることの証明を受けた場合です。ただし、不動産の場合は、これに加えて不動産鑑定士による鑑定評価も必要となります。

特に「価額の合計が500万円以下」という要件は、手続きを簡略化できるため非常に重要です。

中古のパソコンや車両、ソフトウェアなどを現物出資する際は、客観的な中古市場価格や取得価額を参考に、妥当な金額を設定することが求められます。

ステップ3 必要な書類を作成し提出する

財産の価額評価の方針が決まったら、登記申請に向けて現物出資特有の書類を作成します。

主に「調査報告書」と「財産引継書」の2つが重要です。

調査報告書

調査報告書は、検査役の調査が不要な場合に、その代わりに作成される書類です。
設立時取締役(および設立時監査役を設置している場合は設立時監査役)が、現物出資財産の価額評価の妥当性や、財産の給付が実際に行われたことを調査し、その結果をまとめたものです。

この報告書には、主に以下の内容を記載します。

  • 現物出資財産の価額が相当であることの調査結果
  • 価額を相当と判断した理由(例:購入時の価格、中古市場の相場、減価償却の状況など)
  • 弁護士や税理士などの証明を受けている場合はその旨
  • 財産の給付(引き渡し)が完了していること

この調査報告書と、その附属書類として価額の根拠資料(購入時の領収書や見積書など)をセットで保管し、登記申請時に法務局へ提出します。

財産引継書

財産引継書は、現物出資をした発起人から、設立される会社へ財産が確かに引き継がれたことを証明するための書類です。
会社設立日(登記申請日)付で作成します。

この書類には、以下の内容を記載し、現物出資者(譲渡人)と会社の代表者(設立時代表取締役、譲受人)が記名押印します。

  • 引き継ぐ財産の詳細(定款に記載したものと同じ内容)
  • 財産を引き渡した日付
  • 譲渡人(現物出資者)の氏名・住所と押印
  • 譲受人(設立される会社)の商号・本店所在地・代表者氏名と押印(会社実印)

この財産引継書も、会社設立登記の際に法務局へ提出する重要な添付書類となります。

ステップ4 会社設立の登記申請を行う

すべての書類が準備できたら、最後の手続きとして法務局へ会社設立の登記申請を行います。

金銭出資のみの場合に必要な書類に加えて、現物出資に関連する以下の書類を添付します。

  • 定款(現物出資に関する変態設立事項が記載されたもの)
  • 調査報告書及びその附属書類
  • 財産引継書
  • (専門家の証明を受けた場合は)価額に関する証明書

これらの書類を管轄の法務局に提出し、登記が完了すれば、正式に現物出資による資本金の計上が認められ、会社設立手続きは完了です。

書類に不備があると登記申請が受理されない、あるいは補正を求められるため、各ステップで慎重に手続きを進めることが成功の鍵となります。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

現物出資は、手元に現金がなくても会社を設立できる便利な制度ですが、金銭出資にはない特有のルールやリスクが存在します。
これらの注意点を事前に理解しておかなければ、後から追加の費用や責任が発生したり、税務上の思わぬ負担を強いられたりする可能性があります。

ここでは、現物出資を検討する際に必ず押さえておくべき5つの重要な注意点を詳しく解説します。

注意点1 財産の価額評価は適正に行う

現物出資において最も基本かつ重要なのが、出資する財産の価額を適正に評価することです。

定款には、出資する財産、その価額、出資者の氏名を記載する必要がありますが、この「価額」を自己判断で不当に高く設定することはできません。

もし、実際の価値よりも著しく高い価額で評価してしまうと、他の株主との間で不公平が生じるだけでなく、後述する「填補責任」という重い義務を負うリスクがあります。

価額の評価は、必ず客観的で合理的な根拠に基づいて行う必要があります。

例えば、パソコンであれば同等品の中古市場価格や購入時期からの減価償却を考慮した帳簿価額、自動車であれば中古車販売サイトの相場や買取業者による査定額などが根拠となります。

独断で「これくらいだろう」と決めるのではなく、第三者が見ても納得できる資料を準備しておくことが肝心です。

注意点2 500万円の壁と検査役の調査

現物出資財産の価額評価が適正かどうかを担保するため、会社法では原則として、裁判所が選任する「検査役」による調査を受けなければならないと定められています。

しかし、この調査には時間と費用がかかるため、手続きの負担が大きくなってしまいます。

そこで、小規模な会社設立をスムーズにするための例外規定が設けられています。
特に重要なのが、現物出資する財産の価額の合計が500万円以下である場合、この検査役の調査が不要になるというルールです。

これは通称「500万円の壁」と呼ばれており、多くのスタートアップ企業が現物出資を利用する際に活用しています。

検査役の調査が不要になるケースは、主に以下の通りです。

検査役の調査条件
不要現物出資財産の価額の合計が500万円以下の場合
不要市場価格のある有価証券(上場株式など)で、定款に定めた価額がその市場価格を超えない場合
不要定款に記載された価額が相当であることについて、弁護士、公認会計士、税理士などによる証明を受けた場合(不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)
必要上記のいずれにも該当しない場合(例:評価額が500万円を超える自社開発のソフトウェアや非上場株式など)

会社設立の手間とコストを抑えるためには、現物出資する財産の合計額を500万円以下に調整するのが最も現実的な選択肢と言えるでしょう。

注意点3 給付不足の場合の填補責任

「填補(てんぽ)責任」とは、現物出資において非常に重い責任の一つです。

これは、会社設立時に定款で定めた現物出資財産の価額が、実際の価値に著しく不足していた場合に、その不足額を発起人(出資者)や設立時取締役が連帯して会社に対して支払わなければならないという義務です(会社法第52条)。

例えば、実際には30万円の価値しかないパソコンを、見栄えを良くするために100万円と評価して現物出資したとします。

後にその価額が不当であったと判断された場合、差額の70万円を現金で会社に支払う義務が生じるのです。この責任は、原則として過失がなくても負わなければなりません。

検査役の調査を受けた場合や、職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は免責されますが、その証明は容易ではありません。

このような事態を避けるためにも、「注意点1」で述べたように、客観的な根拠に基づいた適正な価額評価が絶対に必要です。

注意点4 税務上の取り扱いを理解する

現物出資は、税務上「資産の譲渡」として扱われます。
そのため、出資者側と会社側の両方で税金の問題が発生する可能性があり、注意が必要です。

出資者側(個人)の税金

個人が所有する資産を会社に現物出資した場合、その資産を「時価」で会社に売却(譲渡)したとみなされます。
この時、出資した資産の時価が、その資産を取得したときの価額(取得価額)を上回っていると、その差額(譲渡益)に対して所得税や住民税が課税される可能性があります。

特に、購入時から価値が上がっている不動産や有価証券などを現物出資する際は、多額の譲渡所得税が発生するリスクがあるため、事前に税理士に相談することが不可欠です。

会社側(法人)の税金

会社は、現物出資によって資産を時価で取得したことになります。
その資産がパソコンや自動車、建物などの減価償却資産である場合、その時価を基に、将来にわたって減価償却費として費用計上していくことができます。
また、出資者が消費税の課税事業者である場合、会社側で消費税の仕入税額控除を受けられるケースもあります。

このように、現物出資に伴う税務は非常に複雑です。有利な処理が可能になる一方、予期せぬ課税を招くこともありますので、必ず税理士などの専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

注意点5 不動産の場合は登記費用や税金が別途必要

土地や建物といった不動産を現物出資の対象とすることも可能ですが、他の動産とは異なり、特有のコストと手続きが発生します。

不動産は評価額が高額になりがちなため、これらの費用も決して無視できません。

具体的には、会社設立の登記費用とは別に、不動産の名義を出資者個人から新設法人へ移すための費用が必要となります。

主な費用は以下の通りです。

費用・税金の種類内容費用の目安(税率は変動する場合があります)
登録免許税所有権移転登記の際に法務局へ納める国税固定資産税評価額 × 2.0%
不動産取得税不動産を取得したことに対して都道府県へ納める地方税固定資産税評価額 × 3%~4%(軽減措置あり)
司法書士報酬所有権移転登記の手続きを専門家へ依頼する際の報酬案件の難易度により5万円~15万円程度

例えば、固定資産税評価額が1,500万円の土地を現物出資する場合、登録免許税だけで30万円、不動産取得税で45万円程度(軽減措置を考慮しない場合)の税金がかかる計算になります。

これらの高額な実費を現金で用意する必要があるため、不動産の現物出資を検討する際は、事前に司法書士や税理士に相談し、総額でいくらのコストがかかるのかを正確に把握しておくことが極めて重要です。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

ここでは、資本金の現物出資を検討する際に、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式で詳しく解説します。

具体的なケースを想定して、手続きや税務上のポイントを分かりやすくまとめました。

個人事業主の資産を現物出資できますか

はい、個人事業主として事業に使用していた資産を、新しく設立する会社に現物出資することは可能です。
これは「法人成り」の際によく用いられる方法です。

例えば、個人事業で使っていた以下のような資産が現物出資の対象となります。

  • 業務用パソコンや周辺機器
  • 事業用の自動車
  • 店舗や事務所の設備・備品
  • 商品や製品などの在庫(棚卸資産)
  • ソフトウェア

これらの資産を現物出資する場合、その資産の時価(市場価格)を適切に評価し、資本金の額を決定します。
ただし、個人から法人へ資産が移転することになるため、税務上の注意が必要です。具体的には、出資した資産の時価が、その資産の取得価額(帳簿価額)を上回る場合、その差額に対して個人に譲渡所得税が課税される可能性があります。
法人成りに伴う現物出資を検討する際は、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

ローンが残っている車でも現物出資できますか

ローンが残っている車を現物出資できるかどうかは、その車の「所有権」が誰にあるかによって結論が異なります。

所有権がローン会社にある場合(所有権留保)

自動車ローンを組んだ際、完済するまで所有権がディーラーや信販会社に留保されているケースが一般的です。車検証の「所有者の氏名又は名称」欄で確認できます。
この場合、車の所有者はあなたではないため、原則として現物出資することはできません。
どうしても出資したい場合は、ローンを完済して所有権の名義を自分に変更する手続きが先に必要となります。

所有権が本人にある場合

銀行のマイカーローンなどを利用し、車検証上の所有者があなた自身になっている場合は、ローンが残っていても現物出資が可能です。
この場合、車の時価からローン残債を差し引いた額が出資額となります。
これは、資産(車)と同時に負債(ローン)も会社が引き継ぐ「負担付現物出資」という扱いになります。

例えば、時価80万円の車にローンが30万円残っている場合、会社への出資額は差額の50万円です。
定款には「金80万円の自動車を出資する。ただし、当該自動車には債務額30万円のローン債務が存在し、設立される会社がこれを負担する」といった趣旨の記載が必要になります。

現物出資はいくらまでできますか?上限はありますか?

法律上、現物出資できる金額に上限はありません。
しかし、実務上は「500万円」が大きな一つの目安となります。
これは、現物出資財産の価額が500万円を超えると、手続きが大幅に複雑化し、費用も増加するためです。

具体的には、裁判所が選任する「検査役」による財産評価の調査が必要になります。
この調査には数十万円から百万円以上の費用と、数ヶ月の期間がかかる場合があります。
そのため、多くの会社設立では、手続きを簡略化できる500万円以下の範囲で現物出資が行われます。

現物出資財産の価額検査役の調査手続き・費用
500万円以下原則不要発起人が作成する調査報告書のみでよく、手続きは比較的簡便。費用も抑えられる。
500万円超原則必要裁判所への検査役選任申立てが必要。弁護士や税理士等による価額証明で代替できる場合もあるが、いずれにせよ専門家への依頼費用と時間が必要となる。

500万円を超える高額な資産(不動産など)を現物出資したい場合は、時間と費用に余裕をもって、司法書士や弁護士などの専門家と相談しながら進めることが不可欠です。

現物出資に消費税はかかりますか?

はい、現物出資は消費税法上「資産の譲渡」に該当するため、原則として消費税の課税対象となります。
ただし、実際に消費税を納める義務があるかどうかは、出資する個人(発起人)が「課税事業者」か「免税事業者」かによって異なります。

  • 出資者が課税事業者の場合:
    現物出資した資産(建物や機械、車両など)の価額に対して消費税が課税されます。出資者は、新設法人から消費税分を預かり、税務署へ申告・納税する必要があります。
  • 出資者が免税事業者(多くのサラリーマンや個人事業主)の場合:
    課税資産を譲渡しても消費税の納税義務は免除されるため、申告・納税の必要はありません。

一方で、出資を受ける新設法人の側では、出資された資産が課税資産であれば、支払った(とみなされる)消費税額を「仕入税額控除」の対象にできる可能性があります。
消費税の取り扱いは複雑なため、特に課税事業者からの出資や高額な資産の出資の場合は、税理士に確認することをおすすめします。

現物出資と金銭出資を組み合わせることはできますか?

はい、現物出資と金銭(現金)による出資を組み合わせることは全く問題なく、むしろ一般的な方法です。

例えば、資本金300万円の会社を設立する際に、以下のように組み合わせることができます。

  • 発起人A:現金で200万円を出資
  • 発起人B:時価100万円の業務用パソコン一式を現物出資

このように組み合わせることで、手元の現金をすべて拠出しなくても、必要な資本金額を確保できるというメリットがあります。
会社の信用力を高めるために資本金をある程度の額にしたいけれど、自己資金が不足している場合などに有効な手段です。
手続き上は、定款に金銭出資者と現物出資者の氏名、およびそれぞれの出資額を明確に記載する必要があります。

資本金の現物出資は、手元の現金が不足していてもパソコンや車などの資産を活用して会社を設立できる有効な手段です。

一方で、財産の価額評価が複雑であったり、税務上の取り扱いを理解する必要があったりと、金銭出資にはない注意点も存在します。

特に、評価額が500万円を超えると原則として検査役の調査が必要になるなど、手続きが煩雑化します。

現物出資を成功させるためには、これらのメリット・デメリットを正しく理解し、必要に応じて司法書士や税理士といった専門家に相談しながら進めることが重要です。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
>経営サポートプラスアルファ ホールディングス

経営サポートプラスアルファ ホールディングス

経営サポートプラスアルファホールディングスは税理士法人や行政書士法人などを含むグループ会社経営によって、従来の会計業界の常識にとらわれることなく、クライアントの成長フェーズに合わせた幅広い事業展開を行っております。
時代の変化に伴いお客様のニーズを拾い上げ付加価値を追求してきた結果として今の体制、サービスがあります。
そしてこれからも起業家のサポーターとして「経営サポートプラスアルファ」という社名の通り、付加価値となるプラスアルファを追求していきます。