会社設立の資本金は「最低いくら必要か」「最適な金額はいくらか」と悩んでいませんか。
法律上は1円から会社を設立できますが、安易に決めると融資や取引先の信用に影響が出る可能性があります。
この記事では、資本金1円のメリット・デメリットから、金融機関からの融資や社会的信用で有利になる「最適な資本金額」の決め方までを5つのステップで徹底解説。
結論として、資本金は「設立初期費用+3〜6ヶ月分の運転資金」を目安にすることが、事業の安定化と成長の鍵となります。
あなたの事業に合ったベストな資本金額を見つけ、スムーズなスタートを切りましょう。
会社設立の最低資本金は法律上1円から可能
「会社を設立したいけれど、資本金はいくら準備すればいいのだろう?」と疑問に思っていませんか。
結論からお伝えすると、現在の法律では、資本金1円から株式会社を設立することが可能です。
これは、かつて起業の大きなハードルとなっていた「最低資本金制度」が撤廃されたためです。
しかし、法律上可能であることと、ビジネスを円滑に進められるかどうかは別の問題です。
この章では、まず最低資本金のルールと、資本金1円で会社を設立する場合のメリット・デメリットを詳しく解説します。
会社法改正で最低資本金制度は撤廃された
かつての日本では、会社を設立するためにまとまった資本金を用意する必要がありました。
具体的には、株式会社を設立するには最低でも1,000万円、有限会社(現在は新規設立不可)を設立するには300万円の資本金が法律で義務付けられていました。
この制度が、多くの起業家にとって高い壁となっていたのです。
しかし、その状況は2006年5月1日に施行された新会社法によって大きく変わりました。
この法改正の目的は、より多くの人がチャレンジしやすい環境を整え、経済を活性化させることでした。
その一環として、株式会社と有限会社の最低資本金制度が完全に撤廃されたのです。
この結果、理論上は資本金がわずか1円であっても、法務局で株式会社の設立登記が受理されるようになりました。
これにより、自己資金が少ない方でも法人格を取得し、ビジネスをスタートする道が開かれました。
資本金1円で会社を設立するメリットとデメリット
法律上は1円で会社を設立できますが、実際に事業を運営していく上では様々な影響があります。
ここでは、資本金1円で会社を設立する際のメリットとデメリットを具体的に見ていきましょう。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 設立コスト | 会社設立にかかる費用を最小限に抑えられる点です。 手元資金が少なくても、法人格を取得して事業を始められます。 | 資本金は会社の初期運転資金となるため、1円では事業開始直後に資金が枯渇し、すぐに債務超過に陥る危険性が極めて高いです。 |
| 社会的信用 | 特にありません。 | 資本金の額は会社の体力や信頼性を示す指標の一つです。 1円では取引先や金融機関から「事業への本気度が低い」「経営基盤が脆弱」と判断され、信用を得られず、契約や取引に至らない可能性があります。 |
| 資金調達(融資) | 特にありません。 | 金融機関、特に日本政策金融公庫などの創業融資では自己資金が重視されます。 資本金1円では自己資金がほぼ無いと見なされ、融資の審査で著しく不利になるか、そもそも申し込みが困難になります。 |
| 許認可の取得 | 特にありません。 | 建設業、人材派遣業、古物商など、特定の事業を行うためには国や都道府県から許認可を得る必要があります。 これらの許認可には、財産的基礎として一定額以上の資本金が要件となっている場合が多く、1円では取得できません。 |
このように、資本金1円での会社設立は、設立コストを抑えられるという唯一のメリットに対して、事業運営におけるデメリットが非常に大きいのが実情です。
法律上は可能でも、現実的な選択肢とは言えません。
会社の信用を確保し、事業を安定的に成長させていくためには、適切な額の資本金を設定することが不可欠です。
あなたの会社設立に最適な資本金はいくら?

法律上は1円から会社を設立できますが、現実的に1円で事業を始めるのは非常に困難です。
「最適な資本金」はいくらなのか、多くの起業家が悩むポイントでしょう。結論から言うと、すべての会社に共通する「正解」の金額はありません。
あなたの事業計画や目標によって、最適な資本金の額は大きく変わるからです。
しかし、一般的な相場や業種ごとの目安を知ることは、ご自身の資本金額を決める上で非常に重要な判断材料となります。
ここでは、客観的なデータと業種別の傾向から、あなたの会社に最適な資本金を見つけるためのヒントを解説します。
会社の資本金の平均額と中央値
まず、他の会社がどれくらいの資本金で設立されているのか、全体像を把握しましょう。会社の資本金に関するデータを見ると、平均額と多くの起業家が実際に設定している金額(実態)には少し差があることがわかります。
法務省の統計データによると、近年設立された株式会社の資本金の構成は以下のような割合になっています。
| 資本金の額 | 会社数の割合(目安) |
|---|---|
| 100万円未満 | 約20% |
| 100万円以上300万円未満 | 約45% |
| 300万円以上500万円未満 | 約15% |
| 500万円以上1,000万円未満 | 約10% |
| 1,000万円以上 | 約10% |
この表からわかるように、資本金100万円以上300万円未満で設立される会社が最も多く、全体の約半数を占めています。
次に多いのが100万円未満の会社です。
つまり、設立される会社の約8割は資本金500万円未満ということになります。
資本金の「平均額」は約300万円前後と言われることもありますが、これは一部の資本金が非常に高い会社によって引き上げられている数字です。
実態としては、より多くの起業家が選んでいる「中央値」や「最頻値」(最も多い価格帯)に近い、100万円から300万円あたりが一つの現実的な目安と言えるでしょう。
業種別にみる資本金の目安
最適な資本金額は、事業内容によって大きく異なります。
特に、初期投資の大きさや事業に必要な許認可の有無が重要な判断基準となります。
ここでは、代表的な業種を例に資本金の目安を見ていきましょう。
許認可が不要なサービス業(IT・コンサル・デザインなど)
Web制作、システム開発、コンサルティング、デザイナー、ライターといった、主にパソコンと自身のスキルで始められる業種は、大規模な設備投資や店舗が不要なため、資本金を比較的低く設定しやすいのが特徴です。
事務所も自宅や小規模なレンタルオフィスで済む場合が多いでしょう。
この場合の資本金は、当面の運転資金を基準に考えるのが合理的です。
目安としては、設立後3ヶ月〜6ヶ月分の運転資金(50万円〜300万円程度)を資本金として準備するケースが多く見られます。
ただし、法人向けの取引がメインになる場合は、会社の信用力を示すためにも100万円以上にしておくと安心です。
店舗や設備が必要な業種(飲食・小売・美容など)
飲食店、小売店、美容室、整体院など、実店舗を構えて事業を行う場合は、初期費用が高額になる傾向があります。
具体的には、店舗の敷金・礼金、内装工事費、厨房設備や什器の購入費、商品の仕入れ費用などが発生します。
これらの初期費用を自己資金(資本金)でどれだけ賄えるかが、その後の資金繰りを大きく左右します。
初期投資額と当面の運転資金を合計した金額を資本金の目安とするのが一般的で、具体的には300万円〜1,000万円程度になることが多いでしょう。
金融機関からの融資を前提とする場合でも、自己資金が潤沢であることは審査で有利に働きます。
許認可で資本金要件が定められている業種
特定の業種で事業を行うには、国や都道府県から「許認可」を得る必要があります。
その中には、会社の財産的基礎として一定額以上の資本金(または自己資本)が要件として定められているものがあります。
これらの業種で会社を設立する場合、法律で定められた要件をクリアできる金額を資本金として設定することが必須です。
主な許認可と資本金要件は以下の通りです。
| 業種(許認可の種類) | 必要な自己資本・資産額 | 備考 |
|---|---|---|
| 一般建設業 | 500万円以上 | 自己資本(純資産)の額が500万円以上であること。 |
| 一般労働者派遣事業 | 2,000万円 × 事業所数 | 基準資産額(資産総額から負債総額を引いた額)が要件を満たすこと。 |
| 有料職業紹介事業 | 500万円 + (事業所数-1) × 150万円 | 基準資産額が要件を満たすこと。 |
| 第一種旅行業 | 3,000万円 | 基準資産額が要件を満たすこと。 |
表中の「自己資本」や「基準資産額」は、貸借対照表の純資産額を指します。
会社設立時においては、資本金の額をこの要件以上に設定しておくのが最もシンプルで確実な方法です。
ご自身の事業に必要な許認可と、その資本金要件を必ず事前に確認しましょう。
資本金の額が会社経営に与える5つの重要ポイント

会社設立時の資本金は、法律上1円から可能になりましたが、その金額は単なる設立手続き上の数字ではありません。
資本金の額は、設立後の資金繰り、金融機関や取引先からの信用、さらには税金の額にまで影響を及ぼす、会社経営の根幹をなす重要な要素です。
ここでは、資本金の額が会社経営に与える5つの重要なポイントを具体的に解説します。
ポイント1 会社の運転資金
設立時に払い込まれた資本金は、会社が事業を開始するための最初の「軍資金」であり、当面の運転資金となります。
会社を設立しても、すぐに売上が立って利益が出るとは限りません。
むしろ、多くの場合は売上が安定するまで数ヶ月から半年以上の期間を要します。
その間も、オフィスの家賃、従業員の給与、水道光熱費、仕入れ代金、広告宣伝費など、事業を継続するための支払いは毎月発生します。
資本金は、こうした売上がない期間でも事業を維持するための「体力」そのものです。資本金が少ないと、想定外の出費や売上の遅延が少しあっただけで、すぐに資金が底をつき、事業継続が困難になる「資金ショート」のリスクが高まります。
十分な運転資金を資本金として準備しておくことは、安定した経営の第一歩と言えるでしょう。
ポイント2 金融機関からの融資の受けやすさ
会社経営において、事業拡大や設備投資のために金融機関からの融資を検討する場面は少なくありません。
その際、資本金の額は、金融機関が融資審査を行う上で「経営者の本気度」と「会社の財務的な体力」を測る重要な指標となります。
特に、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」などを利用する際には、自己資金の額が重視されます。
資本金は自己資金の代表的なものであり、その額が多いほど「事業に対する準備をしっかり行い、リスクを負う覚悟がある」と評価され、融資審査で有利に働く傾向があります。
逆に、資本金が1円や数万円といった極端に少ない金額の場合、「事業計画が甘いのではないか」「自己資金を準備できないほど計画性がないのではないか」と見なされ、融資の申し込みを断られたり、希望額よりも大幅に減額されたりする可能性が高くなります。
ポイント3 取引先からの社会的信用
新たな取引先と契約を結ぶ際、相手企業はあなたの会社の信用度を調査します。
その調査方法の一つが、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)の確認です。
登記事項証明書には資本金の額が記載されており、誰でも閲覧することができます。
もし資本金の額が極端に少ない場合、取引先は「この会社は支払い能力に問題があるのではないか」「すぐに倒産してしまうリスクはないだろうか」といった懸念を抱く可能性があります。
資本金は会社の「体力」や「規模」を示す一つの目安であり、取引の安全性を判断するための重要な判断材料となるのです。
特に、大手企業との取引や、継続的に大きな金額の取引を行いたいと考えている場合、ある程度の資本金額があることは、円滑な取引関係を築く上で不可欠な社会的信用につながります。
ポイント4 事業に必要な許認可の取得
事業内容によっては、事業を開始するために国や都道府県から「許認可」を得る必要があります。
そして、一部の許認可では、取得要件として一定額以上の資本金(または純資産額)が法律で定められています。
例えば、建設業や労働者派遣事業、有料職業紹介事業などがこれに該当します。
これらの事業を始めたいと考えているにもかかわらず、資本金要件を満たしていなければ、そもそも事業をスタートすることすらできません。
会社設立後に許認可が取得できないといった事態を避けるためにも、ご自身の事業に必要な許認可の有無と、その資本金要件を事前に必ず確認しておく必要があります。
資本金(財産的基礎)要件がある許認可の例
| 業種 | 許認可の種類 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 建設業 | 一般建設業許可 | 自己資本の額が500万円以上であること |
| 建設業 | 特定建設業許可 | 資本金が2,000万円以上、かつ自己資本が4,000万円以上であること |
| 労働者派遣事業 | 労働者派遣事業許可 | 基準資産額が2,000万円以上であること |
| 職業紹介事業 | 有料職業紹介事業許可 | 基準資産額が500万円以上であること |
※上記は一例です。要件は改定されることがあるため、事業を開始する際は必ず最新の情報を管轄の行政機関にご確認ください。
ポイント5 会社設立後の税金の額
資本金の額は、会社が支払う税金の額にも直接影響します。
特に注意すべきなのが「法人住民税」と「消費税」です。
法人住民税の均等割
法人住民税は、会社の利益に応じて課税される「法人税割」と、利益が赤字であっても支払わなければならない「均等割」で構成されています。
この「均等割」の税額は、資本金の額と従業員数によって決まります。
具体的には、資本金が1,000万円を超えると、均等割の税額が大きく跳ね上がります。
例えば、東京都23区内の場合、資本金1,000万円以下・従業員50人以下であれば年7万円ですが、資本金が1,000万円を超えると年18万円になります。
特別な理由がない限り、設立時の資本金は1,000万円以下に抑えるのが節税の基本です。
| 資本金等の額 | 法人住民税 均等割の額(東京都23区内・従業員50人以下の場合) |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 7万円 |
| 1,000万円超 1億円以下 | 18万円 |
消費税の免税措置
設立時の資本金を1,000万円未満に設定することで、原則として設立から2事業年度(2年間)は消費税の納税が免除されるという大きなメリットがあります。
(※特定期間の課税売上高など、他の要件によっては免税が適用されない場合があります)
設立当初は売上も少なく、資金繰りが厳しい時期です。
この時期に消費税の納税が免除されることは、経営にとって非常に大きな助けとなります。
融資の受けやすさなどを考慮して1,000万円以上の資本金も検討できますが、税金面での有利不利を考えると、まずは「1,000万円の壁」を意識して資本金額を決定することが賢明な選択と言えるでしょう。
融資や信用で有利になる資本金の決め方 5ステップ

会社の資本金をいくらに設定するかは、単に会社設立の要件を満たすだけでなく、その後の経営を大きく左右する重要な経営判断です。
ここでは、融資や社会的信用で有利になる、戦略的な資本金の決め方を5つのステップで具体的に解説します。
このステップに沿って検討することで、あなたの会社に最適な資本金額が見えてくるでしょう。
ステップ1 会社設立の初期費用を計算する
資本金を決定する最初のステップは、会社設立に最低限必要な「初期費用」を正確に把握することです。
初期費用は、大きく「法定費用」と「その他の設立費用」に分けられます。
これらの合計額が、資本金でまずカバーすべき金額の目安となります。
会社の設立形態別の法定費用
法定費用は、定款の認証や法人登記の際に国や公証役場に支払う費用で、設立する会社形態(株式会社か合同会社か)によって異なります。
特に、定款を紙ではなく電子定款にすることで、収入印紙代の4万円が不要になるため、設立費用を抑えたい場合は電子定款の利用がおすすめです。
| 費用項目 | 株式会社(電子定款の場合) | 合同会社(電子定款の場合) |
|---|---|---|
| 定款用収入印紙代 | 0円(紙定款の場合は40,000円) | 0円(紙定款の場合は40,000円) |
| 定款認証手数料 | 30,000円~50,000円 | 不要 |
| 定款の謄本手数料 | 約2,000円(250円/1ページ) | 不要 |
| 登録免許税 | 最低150,000円(資本金の0.7%) | 最低60,000円(資本金の0.7%) |
| 合計(目安) | 約182,000円~ | 60,000円~ |
その他の設立費用
法定費用以外にも、事業を開始するために必要な費用がかかります。
以下のような項目をリストアップし、漏れなく計算しましょう。
- 事務所・店舗の契約費用(敷金、礼金、保証金、前払家賃、仲介手数料など)
- 内装工事費
- パソコン、デスク、椅子、複合機などのオフィス家具・備品購入費
- インターネットや電話回線の工事費
- 会社の実印・銀行印・角印などの印鑑作成費用
- 会社のホームページ制作費
- 名刺やパンフレットなどの販促物作成費
これらの初期費用を合計した金額が、事業をスタートする上で最低限用意すべき自己資金の一つの基準となります。
ステップ2 設立後3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を確保する
会社を設立しても、すぐに売上が安定して入金されるとは限りません。
事業が軌道に乗るまでの間、会社を維持していくための「運転資金」を資本金として確保しておくことは極めて重要です。
売上がなくても事業を継続できる資金があることは、経営の安定性だけでなく、経営者の精神的な安定にも繋がります。
一般的に、運転資金は最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分を用意するのが理想とされています。
運転資金には以下のような費用が含まれます。
- 役員報酬・従業員給与
- 事務所・店舗の家賃
- 水道光熱費、通信費
- 商品の仕入費用
- 広告宣伝費
- 交通費や消耗品費などの諸経費
例えば、1ヶ月の運転資金が50万円かかる場合、3ヶ月分なら150万円、6ヶ月分なら300万円を、ステップ1で計算した初期費用に上乗せして資本金の額を検討します。
潤沢な自己資金は、後述する融資審査においても有利に働きます。
ステップ3 創業融資の利用を検討する
自己資金だけでは十分な資金を確保できない場合、創業融資の活用が有効な選択肢となります。
特に、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、多くの起業家が利用する代表的な制度です。
融資の審査において、資本金の額は「自己資金」として評価され、非常に重要な判断材料となります。
自己資金が多いほど、事業に対する経営者の本気度や周到な準備が評価され、返済能力が高いと判断されるため、融資を受けやすくなる傾向があります。
以前は「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」という要件がありましたが、現在は撤廃されています。しかし、実務上は自己資金の重要性に変わりはありません。
一般的に、融資希望額の3分の1から2分の1程度の自己資金(資本金)を用意することが、審査通過の一つの目安とされています。
例えば、500万円の融資を受けたい場合、170万円から250万円程度の資本金を用意しておくと、事業計画の説得力が増し、審査で有利に進められる可能性が高まります。
創業融資の利用を視野に入れるなら、この点を考慮して資本金額を決定しましょう。
ステップ4 許認可事業の資本金要件を確認する
特定の業種で事業を行う場合、国や都道府県から「許認可」を得る必要があります。
この許認可の取得要件として、一定額以上の資本金や純資産が定められている場合があります。
自社が始める事業に許認可が必要かどうか、そしてその要件に資本金に関する規定がないかを必ず事前に確認してください。
もし要件を満たしていない場合、そもそも事業を開始することができません。
主な許認可事業における資本金(または財産的基礎)の要件は以下の通りです。
| 業種 | 許認可の種類 | 資本金・財産要件の概要 |
|---|---|---|
| 建設業 | 一般建設業許可 | 自己資本の額が500万円以上であること 等 |
| 建設業 | 特定建設業許可 | 資本金2,000万円以上、かつ自己資本4,000万円以上であること 等 |
| 労働者派遣事業 | 一般労働者派遣事業許可 | 基準資産額(資産総額-負債総額)が2,000万円 × 事業所数 以上であること 等 |
| 旅行業 | 第一種旅行業登録 | 基準資産額が3,000万円以上であること |
| 有料職業紹介事業 | 有料職業紹介事業許可 | 基準資産額が500万円 × 事業所数 以上、かつ現預金額が150万円 ×(事業所数-1)+500万円 以上であること |
これらの事業を計画している場合は、法律で定められた基準をクリアする資本金を設定することが絶対条件となります。
ステップ5 税金面でのメリットを考慮して最終決定
これまでのステップで算出した資本金額を、最後に税金面から見直して最終決定します。
資本金の額は、特に「消費税」と「法人住民税」の負担に直接影響します。
消費税の免税メリットを最大限に活用する
原則として、資本金1,000万円未満で会社を設立すると、設立第1期目と第2期目の消費税の納税が免除されます。
これは、創業期のキャッシュフローにとって非常に大きなメリットです。
(※ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるなど、一部例外的に課税事業者となるケースもあります。)
多額の設備投資などで消費税の還付を受けたい場合を除き、多くの企業にとってこの免税措置は有利に働きます。
そのため、特別な理由がなければ資本金を1,000万円未満に設定するのが税務上のセオリーとされています。
法人住民税(均等割)を最低額に抑える
法人住民税の一部である「均等割」は、会社の利益に関わらず(つまり赤字でも)支払わなければならない税金です。
この均等割の税額は、資本金の額と従業員数に応じて段階的に設定されています。
例えば、東京都(23区内)の場合、従業員数が50人以下であれば以下のようになります。
| 資本金等の額 | 法人住民税 均等割の年額 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 70,000円 |
| 1,000万円超 1億円以下 | 180,000円 |
| 1億円超 10億円以下 | 290,000円 |
表からも分かる通り、資本金が1,000万円を1円でも超えると、均等割の額が年間11万円も増加します。
この税負担の増加を避けるためにも、資本金は1,000万円のラインを意識して設定することが賢明です。
以上の5つのステップを踏まえ、事業計画、資金調達、許認可、税務メリットを総合的に考慮し、あなたの会社にとって最も戦略的で有利な資本金額を決定しましょう。
会社設立時の資本金に関するよくある質問

会社設立の手続きを進める中で、資本金の取り扱いについては特に疑問が生じやすいポイントです。
払い込みのタイミングや方法を間違えると、設立手続きが滞ってしまう可能性もあります。
ここでは、資本金に関するよくある質問とその回答をまとめました。設立準備をスムーズに進めるために、ぜひ参考にしてください。
資本金はいつまでに払い込む?
資本金の払い込みは、「定款の認証後」から「法務局へ登記申請を行う前」までの間に完了させる必要があります。
会社設立の手続きは特定の順序で進める必要があり、資本金の払い込みもそのプロセスの一部です。
具体的な流れは以下の通りです。
| ステップ | 手続き内容 | 資本金払込との関連 |
|---|---|---|
| 1 | 定款の作成 | この段階ではまだ払い込みは行いません。 |
| 2 | 定款の認証(株式会社の場合) | 公証役場で定款の認証を受けた後、払い込みが可能になります。 |
| 3 | 資本金の払い込み | このタイミングで、発起人の個人口座に資本金を振り込みます。 |
| 4 | 払込証明書の作成 | 払い込みが完了したことを証明する書類を作成します。 |
| 5 | 登記申請書類の作成・提出 | 払込証明書を含む必要書類一式を法務局に提出します。登記申請日が会社の設立日となります。 |
重要なのは、会社の設立日(登記申請日)よりも前に、資本金の払い込みが完了している事実を客観的に証明できるようにしておくことです。
登記申請の直前になって慌てないよう、計画的に進めましょう。
資本金は誰の口座に振り込む?
資本金は、発起人(会社を設立する人)の代表者、またはいずれかの発起人の個人口座に振り込みます。
会社設立の準備段階では、まだ法人名義の銀行口座は開設できません。
そのため、一時的に発起人個人の口座を利用します。発起人が複数いる場合は、代表者一人の口座に全員がそれぞれの出資額を振り込むのが一般的です。
誰がいくら振り込んだかが明確にわかるようにしておきましょう。
払い込みに使用する口座は、普段使っている給与振込口座などでも問題ありません。
しかし、取引履歴が多いと、資本金の振込記録を探すのが大変になる場合があります。
可能であれば、残高をゼロにした口座や、取引が少ない休眠口座などを利用すると、通帳のコピーを作成する際に該当箇所が分かりやすくなり、手続きがスムーズに進みます。
見せ金はなぜ絶対にしてはいけないのか
「見せ金」とは、一時的に第三者からお金を借りて資本金として払い込み、会社の登記が完了したらすぐに引き出して返済する行為です。
この「見せ金」は会社法で明確に禁止されている違法行為であり、絶対に行ってはいけません。
見せ金が発覚した場合、以下のような重大なリスクを負うことになります。
- 会社の設立が無効になる可能性
見せ金による払込は法的に無効と判断され、会社の設立自体が取り消されるリスクがあります。 - 刑事罰の対象となる可能性
事実と異なる内容で登記申請を行うことは、公正証書原本不実記載等罪(刑法第157条)に該当する可能性があり、懲役や罰金が科されることがあります。 - 金融機関や取引先からの信用失墜
創業融資の審査などで通帳の履歴を確認された際に、見せ金が発覚すれば信用は完全に失われます。その後の資金調達は絶望的になり、事業の継続が困難になります。
資本金は会社を経営していくための元手となる大切なお金です。
安易な考えで見せ金に手を出すと、会社の未来を根底から揺るがす事態になりかねません。
自己資金が不足している場合は、次の章で解説する創業融資制度などを正しく活用しましょう。
資本金の払い込みを証明する方法は?
資本金が正しく払い込まれたことを証明するためには、「払込証明書」という書類を作成し、法務局に提出する必要があります。
払込証明書には、以下の情報を記載します。
- 払い込みがあった金額の総額
- 払い込みがあった株数
- 1株の払込金額
- 日付
- 本店所在地
- 商号(会社名)
- 代表取締役の氏名と押印
そして、この払込証明書に加えて、実際に資本金が振り込まれたことがわかる通帳のコピーを合綴(ホチキスで留めて綴じること)します。
必要なコピーは以下の3点です。
- 通帳の表紙
- 通帳の1ページ目(銀行名、支店名、口座番号、名義人が記載されているページ)
- 資本金の振込が記帳されたページ
発起人が複数人いて、各自が自分の口座から代表者の口座へ振り込んだ場合は、その全ての振込記録がわかるようにコピーを取ります。
ネットバンクを利用していて紙の通帳がない場合は、金融機関のサイトからダウンロードした取引明細や入出金明細のPDFなどを印刷して添付します。
資本金は設立後すぐに使っていいの?
はい、設立した会社の事業目的のためであれば、登記完了後すぐに使うことができます。
資本金は、会社の設立登記が完了した後に開設する「法人名義の銀行口座」に移し替えて管理するのが一般的です。
その後は、事務所の家賃や備品の購入、商品の仕入れ、従業員への給与支払いなど、会社の運転資金として自由に活用できます。
資本金は「登記のために一時的に用意するお金」ではなく、「事業を軌道に乗せるための最初の軍資金」です。
設立後すぐに必要となる経費の支払いに充てることで、スムーズな事業スタートを切ることができます。
現物出資で資本金を準備することはできますか?
はい、金銭の代わりに不動産、自動車、パソコン、有価証券といった「モノ(現物)」で出資する「現物出資」も可能です。
手元の現金が少なくても資本金を増やすことができるというメリットがあります。
ただし、現物出資には注意点があります。
出資されたモノの価値を客観的に評価する必要があるため、原則として裁判所が選任した検査役による価額の調査を受けなければなりません。
この手続きは時間も費用もかかります。
しかし、以下の条件を満たす場合は、この検査役の調査が不要になるという例外規定があります。
- 現物出資する財産の総額が500万円以下の場合
- 市場価格のある有価証券で、定められた方法により算定された価額を超えない場合
- 弁護士や税理士などによる価額が相当であることの証明を受けた場合
特に「総額500万円以下」のルールは多くのスタートアップで活用されています。
例えば、事業に使う予定のパソコンや車などを現物出資することで、資本金の額を調整することが可能です。
ただし、価額の妥当性を証明する書類の準備など、金銭出資に比べて手続きが煩雑になる点は理解しておく必要があります。
まとめ
会社設立の最低資本金は法律上1円から可能ですが、安易に決めるのは危険です。資本金の額は会社の体力や社会的信用を示す重要な指標となるため、事業を円滑に進めるためには適切な金額設定が欠かせません。
具体的には、設立初期費用に加えて、最低でも3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を目安に設定することをおすすめします。
これにより金融機関からの融資や取引先との関係構築が有利になります。
許認可の要件や税金面も考慮し、ご自身の事業計画に合った最適な金額を決定しましょう。