株式会社の設立に必要な人数や役員構成について正確に理解したい方へ。
この記事では発起人・取締役・代表取締役の最低人数から取締役会や監査役の設置要件、最新の会社法による人数規定のポイントを分かりやすく解説します。
現在、株式会社の設立は一人でも可能であり、実際のケースごとの注意点や手続き、法改正による変化についても網羅しています。
株式会社設立に必要な最低人数とは
株式会社を設立する際には、まず「何人必要か」という点が重要なポイントとなります。
日本国内における株式会社の設立人数要件は、会社法の改正により大幅に緩和されており、個人や少人数での設立も可能となっています。
ここでは、株式会社設立に必要となる人数に関して、発起人、取締役、代表取締役の観点から具体的に解説します。
発起人の必要人数
株式会社を設立するために必要な発起人の人数は1名以上です。
過去には最低でも7名の発起人が必要でしたが、現在は法改正により1名でも株式会社を設立することが可能になっています。
発起人とは、設立時に会社設立の意思決定、定款作成・認証の手続きを行い、出資をする個人または法人を指します。
このため、複数人での共同設立に加え、法人が発起人となるケースもある点に注意してください。
取締役の必要人数
株式会社の設立時に必要な取締役は1名以上です。
従来は「取締役3名以上」が要件とされていましたが、現在は少人数での経営に対応できるよう、1名のみでも設立が認められています。
ただし、会社の機関設計をどのようにするかによって、必要な取締役の人数が異なる場合があります。
標準的な小規模・中小企業であれば、1名の取締役のみで十分です。
代表取締役を置く場合の人数
株式会社の運営においては、「代表取締役」は必ず置く必要があるとは限りません。
取締役が1人のみの場合、その取締役が自動的に会社を代表することになるため、特別に「代表取締役」の選任を必要としません。
しかし、複数名の取締役を置く場合には、代表取締役を選任する必要があります。代表取締役は、会社の対外的な代表者として登記されます。
そのため会社の規模や運営体制により、代表取締役の人数と登記方法が異なることにも注意が必要です。
役職名 | 設立時の必要人数 | 備考 |
---|---|---|
発起人 | 1名以上 | 個人・法人どちらでも可 |
取締役 | 1名以上 | 取締役会設置でなければ1名可 |
代表取締役 | 必要に応じて | 取締役が複数名いる場合に選任 |
このように、株式会社の設立は最低「発起人1名、取締役1名」から可能であり、必ずしも大人数を必要としません。
個人一人による「一人株式会社」の設立も法的に認められているため、起業を検討している方にもハードルが低くなっています。
ただし、複雑な機関設計や事業展開を予定している場合は、適切な役員人数・構成を事前に検討することが重要です。
役員構成の基本と実際のケース
株式会社を設立する際には、法令で定められた役員構成の基準を満たす必要があります。
設立時だけでなく、会社の成長や事業内容の変化に伴い、最適な役員数や役職の設置について検討することが求められます。
以下、株式会社の主な役員構成パターンと具体的な設例について詳しく説明します。
取締役会設置会社の役員構成
取締役会を設置する場合には、法律により最低限必要な役員の種類と人数が決まっています。
取締役会設置会社は大規模な会社やガバナンスを重視する株式会社で多く採用される形態です。
役職 | 最低人数 | 備考 |
---|---|---|
取締役 | 3名以上 | うち1名は代表取締役が必要 |
監査役 | 1名以上 | 監査役会設置会社の場合は3名以上 |
取締役会を設置することにより、経営意思決定の透明性・客観性、業務執行の監督強化が図られます。
また、会計監査人の設置が義務付けられる場合もあります。
監査役設置会社の場合
監査役設置会社は、取締役会を設置しない場合でも監査役を置くことができる形態です。
経営の監視や業務監査を重視する場合に適しています。
役職 | 必要人数 | ポイント |
---|---|---|
取締役 | 1名以上 | 取締役会非設置会社の場合は1名でも設立可 |
監査役 | 1名以上 | 監査役の設置により、外部からの監査体制を確保 |
監査役設置会社は、特に中小企業で外部資本の参入や第三者の投資を受ける際、ガバナンス強化や透明性向上のために監査役設置が求められるケースが多く見られます。
取締役会非設置会社の特徴
最もシンプルな役員構成を選択できるのが、取締役会を設置しない株式会社です。
平成18年の会社法改正により、取締役1名のみで設立することも可能となっています。
役職 | 最低人数 | 特徴 |
---|---|---|
取締役 | 1名 | 代表取締役を兼ねることが多い |
監査役 | 0名 | 任意で設置可。設置しない場合でも設立可能 |
この形態は起業間もない中小規模のビジネスや、一人株式会社でより迅速な経営判断を求めるケースに最適です。
ただし、内部統制やガバナンスの観点から、将来的な成長や第三者からの資本調達を見越して複数名の役員体制に移行する場合も多くなっています。
家族や一人で株式会社を設立する場合のポイント
一人株式会社の設立は可能か
現在の会社法では、発起人や取締役が1名でも株式会社を設立することが可能です。
つまり、「一人株式会社」が日本でも合法的に認められています。
起業家自身が発起人となり、自身を取締役に選任する形の「一人会社設立」は起業のハードルを下げ、多くの個人に事業開始のチャンスを与えています。
一人株式会社の場合でも、通常の株式会社と同様に必要書類の作成や定款認証、設立登記といった手続きが必須です。
代表取締役は必ず1名以上必要ですが、取締役が1名のみの場合、当然その人物が代表取締役も兼ねることになります。
一人株式会社設立時の主な必要項目
必要項目 | 要点 |
---|---|
発起人 | 1名で可(個人・法人いずれも可) |
取締役 | 1名で可(発起人が兼ねても問題なし) |
代表取締役 | 1名必須(取締役本人が就任するのが一般的) |
定款認証 | 公証役場で発起人1名で認証可能 |
資本金 | 1円から可能 |
このように、個人でも気軽にスタートアップを設立しやすい環境が整っていますが、実際には経理処理や意思決定なども全て一人で行う必要があるため、事業運営の知識や自己管理が求められます。
家族経営を行う場合の注意点
家族で株式会社を設立するケースも多くみられます。
家族を発起人や役員として選任することに、会社法上の制限は特にありません。
家族間であっても設立手続きや登記は他のメンバーと同じ要件が課せられます。
複数人(家族複数名)で株式会社を設立する場合は、それぞれの家族が「発起人」「取締役」などの役員に就任することが可能です。
役員報酬や持株割合について、設立時によく話し合い、公平な取り決めをしておくことがトラブル防止につながります。
家族経営の主なメリット・デメリット
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
経営の意思統一 | 意思決定が早くまとまりやすい | 意見の対立が深刻化すると経営に支障が出る |
信頼性 | 家族間の信頼関係が事業運営にプラス | 第三者からガバナンス上の問題と解釈されやすい |
資本調達 | 家族での出資により資本金確保がしやすい | 外部投資家からの出資が得にくい場合も |
また、親族間での役員兼任や株式保有については、相続時や贈与時の税務面の検討も重要です。
事業承継の際にスムーズに移行できるよう、将来を見据えた経営体制の構築がポイントです。
一方で、会社設立時や経営の中で「名義貸し」と疑われるような行為は会社法や民法にも違反する可能性があるため、実質的に事業に関与する家族が役員や発起人となるよう明確な体制を整えましょう。
家族や一人で株式会社を設立する場合には、法律上の人数要件を把握しつつ、将来的な経営や信頼性、税務等も考慮して設立計画を立てることが重要です。
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株式会社設立人数に関連するよくある質問
兼任はできるのか
株式会社設立においては、一人の人物が複数の役職を兼任することが可能です。
例えば、発起人と取締役を同じ人が兼任したり、代表取締役と取締役を兼任するケースが多く見られます。
ただし、取締役会設置会社では取締役会の構成要員の要件や、監査役と取締役との兼任の禁止など、一部の役職で兼任が禁止されている場合があるため注意が必要です。
具体的な兼任可否の事例は以下の表にまとめます。
役職 | 兼任可能な主な例 | 兼任不可の例 |
---|---|---|
発起人 | 取締役、代表取締役 | 特になし |
取締役 | 代表取締役 | 監査役(取締役会設置会社の場合) |
監査役 | 発起人 | 取締役、代表取締役 |
特に兼任に関する制限は、会社法や定款の内容によって異なる場合があるため、最新の情報を確認することが重要です。
外国人は役員になれるか
日本の株式会社において、外国人の方が発起人や取締役、代表取締役、監査役などの役員に就任することは可能です。
国籍に制限はなく、日本国内に居住していなくても原則として役員就任は認められています。
ただし、実際に運営を行う場合には在留資格や日本での滞在条件、住民登録等の関連法規への配慮が必要となるケースもあります。
また、登記申請時にはパスポート等の本人確認資料の提出が求められる場合もあります。
外国籍役員を置く場合は、登記や銀行口座開設、税務対応など各種手続きが通常より慎重に行う必要があります。
未成年が役員になる場合の注意
株式会社設立時に未成年の方が発起人や取締役、監査役などの役員になることは可能です。
しかし、実際に役員として登記するには、法定代理人(親権者や後見人)による同意書が必要になる点や、会社設立の契約や意思決定に対し十分に理解しているかどうかの確認が重要なポイントです。
また、民法改正により成年年齢が18歳に引き下げられたため、18歳以上であれば成人として単独でこれらの手続きを進めることがされています。
役員区分 | 未成年の可否 | 必要な手続き・注意点 |
---|---|---|
18歳未満 | 可 | 親権者・法定代理人の同意が必須 |
18歳以上 | 可 | 2022年4月の民法改正で単独手続き可能 |
未成年者が設立に関与する場合は、将来の経営責任や法律上の義務についても十分に理解したうえで役員就任を検討することが推奨されます。
株式会社設立の人数と関連法規
会社法における設立人数の規定
株式会社の設立に関する最も基本となる法令は「会社法」です。
会社法では、発起人の人数や役員構成について明確に規定が設けられています。従来は株式会社設立には最低でも発起人3名、取締役3名、監査役1名といった複数人の選任が必要でした。
しかし、2006年5月に施行された会社法(平成17年法律第86号)により、発起人を1名、取締役も1名で株式会社の設立が認められるようになりました。
なお、監査役や取締役会の設置は必須事項ではなく、一人または少人数で設立できる「取締役会非設置会社」という形態と、従来通り複数人で役員を構成する「取締役会設置会社」に大別されます。
設立形態によって必要な人数も異なりますので、法令の規定を十分に理解したうえで検討することが大切です。
組織形態 | 取締役会の有無 | 取締役の最低人数 | 監査役の最低人数 | 発起人の最低人数 |
---|---|---|---|---|
取締役会設置会社 | 設置 | 3名以上 | 1名以上 | 1名以上 |
取締役会非設置会社 | 設置なし | 1名以上 | 任意(なしでも可) | 1名以上 |
上記の表にあるように、会社法によって株式会社は最少1名から設立できる形態へと大きく変化しました。
この改正により、個人や家族経営などの小規模事業者にとっても株式会社設立のハードルが劇的に下がっています。
また、設立時点での役員人数要件などが以前より柔軟になっている点も特徴です。
法改正による人数要件の変化
かつての商法下では、株式会社の設立には複数の発起人と役員が必須とされていましたが、会社法の施行によってその要件は大きく緩和されました。
特に2006年の法改正以降、取締役会非設置会社に限っては「取締役1名」「発起人1名」での設立が可能となり、いわゆる『一人株式会社』や家族のみでの設立も現実的な選択肢となりました。
なお、株主、発起人、取締役はすべて同一人物で兼任することも可能ですが、取締役会を設置する場合や監査役を置く場合には一定の人数が求められる点に注意が必要です。
近年の法改正の経緯をまとめると、以下の表の通りです。
時期 | 主な法規・改正内容 | 必要最小人数 |
---|---|---|
商法時代(改正前) | 発起人3名以上、取締役3名以上、監査役1名以上 | 最大7名 |
2006年5月以降(会社法施行) | 取締役会非設置会社・監査役なしで設立可能 | 1名 |
最新の会社法のもとでは、株式会社設立に求められる最小限の人数は1名であり、法改正以前と比べて大幅に要件が緩和されている点を押さえておく必要があります。
設立後の人数変更とその対応方法
株式会社は設立後も、事業の成長や組織体制の見直しなどによって、取締役や監査役など役員の人数を増減させる必要が生じることがあります。
この章では、設立後の役員人数の変更パターンやその手続き、また登記上の注意点について詳細に解説します。
役員変更手続きについて
役員の数や構成を変更する場合、法定の手続きを適切に経ることが不可欠です。
株式会社の役員変更手続きには、株主総会での決議、必要書類の作成、そして法務局への登記申請が求められます。
特に定款で役員人数の上限・下限が定められている場合は、定款変更が併せて必要です。
変更内容 | 必要な決議・手続き | 主な提出書類 |
---|---|---|
取締役を増員・減員 | 株主総会での決議 | 株主総会議事録、就任/退任承諾書 |
監査役を増員・減員 | 株主総会での決議 | 株主総会議事録、就任/退任承諾書 |
取締役会の設置・廃止 | 定款変更の決議が必要 | 定款変更議事録、変更登記申請書 |
役員を増員・減員するだけでなく、取締役会設置会社への変更や監査役設置会社への移行も、すべて法定の決議および登記が必須です。
期日を遵守し、必要な届け出を怠らないことが信用維持、法令遵守の面でも重要です。
登記上の人数変更と留意点
株式会社は、役員に関する変更があった場合、原則2週間以内に本店所在地を管轄する法務局へ役員変更登記を申請する義務があります。
この登記を怠ると、過料の対象となるため注意が必要です。
また、登記を通じて公開される「役員情報」は、金融機関との取引や官公庁への申請にも用いられるため、最新の内容を保つことが企業信用の確保につながります。
登記に必要となる代表的な書類は下記の通りです。
提出書類 | 主な内容 | 提出時の注意点 |
---|---|---|
取締役・監査役変更登記申請書 | 登記内容や新旧役員の氏名等を記載 | 記載内容を正確に確認 |
株主総会議事録 | 役員変更が決議された証拠 | 出席株主・賛否結果を明記 |
就任・退任承諾書 | 新役員の意思確認および本人署名 | 法改正等で様式変更に注意 |
印鑑証明書 | 新役員分が必要 | 発行から3か月以内のもの |
特に役員人数の変更は、定款(会社の根本規則)との整合性や、会社法上の最低人数など法定要件にも配慮が必要です。
例えば、取締役会設置会社とするには取締役が3名以上、監査役も1名以上必要であり、それを下回らないよう留意します。
スムーズな組織運営のためにも、法務局や専門家(司法書士や行政書士)への事前相談をおすすめします。
まとめ
株式会社設立には、最低1名の発起人と取締役が必要であり、一人でも会社を設立できます。
会社法の改正によって設立時の人数要件は大幅に緩和されましたが、役員構成や登記など法的なルールを守ることが重要です。
状況に応じた最適な人数や役員体制を検討しましょう。