【保存版】法務局での株式会社設立手続き|登記申請の予約方法から書類提出まで完全サポート

株式会社の設立を決意したものの、法務局での手続きが複雑で何から手をつければ良いかお困りではありませんか。

本記事では、株式会社設立における法務局での手続きの全ステップを、初心者の方でも迷わず進められるよう、必要書類の準備から登記申請、完了後の証明書取得まで網羅的に解説します。

この記事を読めば、管轄法務局の調べ方、登記申請書の書き方、登録免許税の納付方法といった具体的な手順がすべて理解できます。

結論として、登記申請自体に予約は不要ですが、書類の不備を防ぐための事前相談は予約がおすすめです。

この完全ガイドを参考に、スムーズな会社設立を実現しましょう。

株式会社の設立手続きにおいて、法務局は避けては通れない、極めて重要な役割を担う国の機関です。

これから会社を立ち上げようとする方にとって、法務局が具体的に何をする場所なのかを正確に理解することは、スムーズな設立手続きの第一歩となります。

この章では、株式会社設立における法務局の基本的な役割と、どの法務局へ行けばよいのかを調べる方法について、分かりやすく解説します。

会社の登記情報を登録する場所

法務局の最も中心的な役割は、会社の情報を法的に記録・管理する「商業登記」の事務を行うことです。
この登記は、いわば「会社の戸籍」のようなもので、設立する株式会社の基本情報を社会に公示するために行われます。

会社を設立する際には、発起人が作成した定款などの書類を法務局に提出し、登記申請を行います。

法務局の登記官がその内容を審査し、法的な要件を満たしていると判断されれば、登記簿に情報が記録されます。
この登記手続きが完了して初めて、会社は法人格を取得し、法的に「株式会社」として社会に認められるのです。

具体的に法務局で登記される主な情報は以下の通りです。

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地(会社の住所)
  • 会社設立の年月日
  • 事業目的
  • 資本金の額
  • 発行可能株式総数
  • 役員(取締役、代表取締役、監査役など)の氏名と住所

これらの登記された情報は「登記事項証明書(登記簿謄本)」として誰でも取得でき、取引先や金融機関が会社の信用度を判断する際の重要な情報源となります。
つまり法務局は、会社の存在と内容を公的に証明し、円滑で安全な経済活動を支える土台を提供しているのです。

管轄の法務局を調べる方法

株式会社の設立登記は、どの法務局でも申請できるわけではありません。

設立する会社の本店所在地を管轄する法務局に申請する必要があります。

例えば、東京都千代田区に本店を置く会社は、東京法務局に申請することになります。

事前にご自身の会社がどの法務局の管轄になるのかを正確に調べておくことが不可欠です。

管轄の法務局を調べる主な方法は、以下の通りです。

調査方法手順とポイント
法務局のウェブサイトで確認最も確実で推奨される方法です。
法務省のウェブサイトには、全国の法務局の管轄を案内するページがあります。
法務局のウェブサイトにアクセスし、「管轄のご案内」などのページを探します。
都道府県を選択し、市区町村、町名・字名まで入力または選択していくと、管轄の法務局が表示されます。
注意点として、法務局には本局の他に支局や出張所があり、商業・法人登記を扱っていない窓口もあります。
必ず、会社設立などの商業登記を取り扱っているかを確認してください。
電話で問い合わせるインターネットでの確認が難しい場合や、不安な点がある場合は、お近くの法務局に直接電話で問い合わせることも可能です。
設立する会社の本店所在地の住所を正確に伝え、「株式会社の設立登記をしたいのですが、管轄はどちらになりますか」と質問します。
電話番号は、法務局のウェブサイトなどで確認できます。

登記申請の準備を始める前に、まずはこの管轄の確認を済ませておきましょう。

誤った法務局に書類を提出してしまうと、受け付けてもらえず、手続きが大幅に遅れる原因となります。

株式会社設立の登記申請を法務局で行うには、事前に数多くの書類を準備する必要があります。

書類に不備があると、補正(修正)のために何度も法務局へ足を運ぶことになりかねません。

手続きをスムーズに進めるため、ここで紹介するリストを参考に、漏れなく準備を進めましょう。

設立する会社の形態(発起設立か募集設立か、取締役会を設置するか否かなど)によって必要書類は異なりますが、ここでは最も一般的な「発起設立」で「取締役会を設置しない」ケースを基本に解説します。

必ず必要な書類

どのような株式会社を設立する場合でも、基本的に提出が必須となる書類です。

一つひとつ内容をしっかり確認しましょう。

書類名作成・取得する人備考
登記申請書発起人(会社設立者)会社の代表印(実印)の押印が必要
登録免許税の収入印紙を貼付した台紙発起人収入印紙は消印しないこと
定款発起人・公証人公証役場で認証を受けた謄本が必要
発起人の決定書発起人発起人全員の実印を押印
取締役の就任承諾書就任する取締役取締役全員分が必要
印鑑証明書就任する取締役発行後3ヶ月以内のもの
資本金の払込証明書発起人代表取締役が作成し、会社代表印を押印
印鑑届書代表取締役会社の実印を法務局に登録するための書類

登記申請書

株式会社設立登記の申請本体となる書類です。
会社の商号、本店所在地、登記の目的、資本金の額といった会社の基本情報を記載します。
法務局のウェブサイトにテンプレート(様式)と記載例が用意されているため、ダウンロードして作成するのが一般的です。
作成後は、会社の代表者となる人が会社代表印(会社の実印)を押印します。

登録免許税の収入印紙を貼付した台紙

株式会社の設立登記には、登録免許税という税金を納める必要があります。
金額は「資本金の額 × 0.7%」で計算しますが、この計算結果が15万円に満たない場合は、一律で15万円となります。
この税金は、現金ではなく収入印紙を購入し、A4の白紙などに貼り付けて提出します。
収入印紙は郵便局や法務局内の印紙売場で購入できますが、貼り付けた印紙に消印はしないよう注意してください。

定款

定款(ていかん)は、会社の組織や運営に関する根本規則を定めたもので、「会社の憲法」とも呼ばれる非常に重要な書類です。
作成した定款は、公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。
法務局へは、公証人による認証を受けた定款の謄本(紙の定款の場合)を提出します。
電子定款の場合は、認証済みの電子データを保存したCD-Rなどを提出するか、登記・供託オンライン申請システムを利用してデータを送信します。

発起人の決定書

定款で具体的な番地まで定めていない本店の所在地や、最初の事業年度などを、発起人全員の同意によって決定したことを証明する書類です。
「発起人会議事録」という名称で作成することもあります。
この書類には、発起人全員が個人の実印を押印する必要があります。

取締役の就任承諾書と印鑑証明書

設立時の取締役に就任することを承諾した、という意思を示すための書類です。
就任する取締役全員分を用意し、本人が署名または記名押印します。
取締役会を設置しない会社の場合、就任承諾書に押す印鑑は個人の実印である必要があり、その印鑑が本人のものであることを証明するために、市区町村役場で取得した印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)を添付します。

資本金の払込証明書

発起人が定めた資本金を、指定の金融機関口座に確かに払い込んだことを証明する書類です。
この書類に決まった書式はありません。
一般的には、払込があった総額や日付などを記載した表紙を作成し、
①発起人代表者の個人口座の通帳の表紙、
②表紙の裏(支店名や口座番号が記載されたページ)、
③各発起人からの振込が記帳されたページ、の3点のコピーを合綴(がってつ)して作成します。
作成した書類は、各ページの綴じ目に会社代表印で契印(けいいん)を押します。

印鑑届書

設立する会社の実印(代表印)を法務局に登録するための書類です。
この届出を行うことで、会社の印鑑証明書を発行できるようになります。
届出書には、会社代表印と、代表取締役個人の実印を押印し、代表取締役個人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)を添付する必要があります。
なお、この印鑑証明書は、取締役の就任承諾書に添付するものと兼用できます。

場合によって必要となる書類

会社の機関設計や登記申請の方法によっては、上記に加えて以下の書類が必要になることがあります。

監査役の就任承諾書

監査役を設置する会社の場合に必要です。取締役の就任承諾書と同様に、監査役に就任する本人が作成し、署名または記名押印します。
原則として、監査役の印鑑証明書の添付は不要です。

登記すべき事項を記録したCD-Rなど

登記申請書に記載すべき事項(商号、本店、目的、役員に関する事項など)は、申請書に直接記載する代わりに、テキストファイルに記録してCD-RやDVD-Rなどの媒体で提出することも可能です。
登記すべき事項が多く、申請書が複数枚にわたる場合に便利な方法です。
法務省のウェブサイトで指定のフォーマットや注意事項が公開されているため、作成前に必ず確認しましょう。
なお、オンラインで電子申請を行う場合は、この媒体を提出する必要はありません。

株式会社の設立は、会社の基本事項の決定から始まり、法務局での登記申請を経て完了します。

ここでは、その一連の流れを4つのステップに分けて、初心者の方にも分かりやすく解説します。

ご自身で手続きを進める際のロードマップとしてご活用ください。

ステップ1 会社の基本事項を決定し書類を作成する

法務局へ登記申請を行う前に、会社の骨格となる基本事項を決定し、それに基づいて必要書類を作成する必要があります。
この準備段階が、設立手続き全体のスムーズさを左右する重要なポイントです。

まず、決定すべき主な基本事項は以下の通りです。

  • 商号(会社名):使用したい会社名が、同一の本店所在地で既に登記されていないか、法務局のオンラインサービスや窓口で商号調査を行います。
  • 事業目的:将来行う可能性のある事業も含め、具体的に記載します。適法性や明確性が求められます。
  • 本店所在地:会社の住所を決定します。自宅やレンタルオフィスも可能です。
  • 資本金の額:1円から設立可能ですが、事業の運転資金や社会的信用を考慮して決定します。
  • 発起人:会社設立を企画し、資本金を払い込む人を決定します。
  • 役員構成と任期:取締役や代表取締役など、会社の役員を誰にするか、またその任期を決定します。
  • 事業年度:会社の決算期をいつにするか決定します。

これらの基本事項が固まったら、前章で解説した必要書類を作成していきます。
特に、会社の憲法ともいえる「定款」の作成は最も重要な作業です。

作成した定款は、公証役場で認証を受ける必要があります(電子定款の場合は認証手数料が不要になるメリットがあります)。
その後、資本金の払込みを行い、払込証明書などの書類を揃えていきます。

ステップ2 管轄の法務局へ登記申請を行う

必要書類がすべて揃ったら、いよいよ法務局へ登記申請を行います。

申請先は、会社の本店所在地を管轄する法務局です。管轄外の法務局に申請しても受理されないため、事前に必ず確認しましょう。

申請方法には、窓口、郵送、オンラインの3つの選択肢があります。

申請方法メリットデメリット備考
窓口申請軽微な不備であればその場で訂正できる可能性がある。
担当者に直接質問できる安心感がある。
法務局の開庁時間内に行く必要がある。
混雑していると待ち時間が発生する。
申請書を提出した日が「会社設立日」にはなりません。
郵送申請法務局へ行く時間と交通費を節約できる。
遠方の法務局にも申請しやすい。
書類が法務局に到着するまで時間がかかる。
不備があった場合のやり取りに時間がかかる。
「登記申請書在中」と朱書きし、書留郵便または信書便で送付します。
オンライン申請24時間いつでも申請可能。
窓口に行く必要がない。
登録免許税の優遇措置がある場合がある。
マイナンバーカードやICカードリーダライタ等の事前準備が必要。
PC操作に慣れていないと難しい。
「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。

法務局の窓口で直接申請する

管轄法務局の「商業・法人登記」の窓口へ、準備した書類一式を持参して提出する方法です。
受付時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までが一般的です。
担当者に直接書類を渡せるため安心感がありますが、書類のチェックや質問対応で時間がかかることもあります。
提出する書類は、クリップなどで順番通りにまとめておくとスムーズです。

郵送で申請する

書類一式を封筒に入れ、管轄法務局宛に郵送する方法です。
書類が確実に届いたことを確認できるよう、一般書留や簡易書留で送るのが基本です。
封筒の表面には「商業登記申請書在中」と朱書きしておきましょう。
返信用の封筒と切手を同封しておくと、補正(書類の修正)が必要な場合にスムーズです。

オンラインで電子申請する

法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、インターネット経由で申請する方法です。
マイナンバーカードとICカードリーダライタ、専用ソフトのインストールなど事前準備が必要ですが、法務局へ出向く必要がなく、24時間申請が可能です。
また、電子定款と組み合わせることで、設立費用を最も安く抑えることができます。

ステップ3 登記完了日を確認する

登記申請書を提出すると、その場で審査が始まるわけではありません。

法務局内で審査が行われ、問題がなければ登記が完了します。
この登記が完了した日が、会社の「設立日(成立年月日)」となります。

申請書を提出した日ではない点に注意が必要です。

登記が完了するまでにかかる期間は、法務局の混雑状況や申請方法によって異なりますが、一般的には申請から1週間~2週間程度です。

登記完了予定日は、申請先の法務局の窓口やウェブサイトに掲示されていることが多いので、確認しておきましょう。

予定日を過ぎても連絡がない場合は、法務局に電話で問い合わせることも可能です。

ステップ4 登記完了後に法務局で各種証明書を取得する

無事に登記が完了したら、会社の公式な証明書である「登記事項証明書(登記簿謄本)」と「印鑑証明書」を取得できるようになります。
これらの書類は、銀行口座の開設、税務署や都道府県税事務所への法人設立届の提出、融資の申し込みなど、会社設立後の様々な手続きで必要不可欠です。

登記完了予定日以降に、再び法務局へ行き、以下の手続きを行います。

  1. 印鑑カードの交付申請:会社の代表印(実印)の印鑑証明書を取得するために必要です。
  2. 登記事項証明書の取得:会社の登記情報が記載された証明書です。複数枚取得しておくと便利です。
  3. 印鑑証明書の取得:印鑑カードを使って取得します。

これらの証明書を取得して、ようやく法務局での一連の設立手続きが完了し、次のステップである各種行政機関への届出に進むことができます。

株式会社設立の手続きで法務局へ行く際、「予約は必要なのだろうか?」と疑問に思う方は少なくありません。

結論から言うと、目的によって予約の要否は異なります。

「登記申請」と「事前の相談」では扱いが違うため、それぞれのケースを正しく理解しておくことがスムーズな手続きの鍵となります。

株式会社設立の登記申請自体に予約は不要

作成した登記申請書類を法務局の窓口へ提出する「登記申請」そのものには、原則として予約は一切不要です

管轄法務局の業務時間内であれば、ご自身の都合の良いタイミングで窓口へ行き、書類を提出することができます。

ただし、法務局の窓口は時間帯によって混雑することがあります。
特に、月末や連休前後は混み合う傾向があるため、時間に余裕を持って訪問することをおすすめします。
また、受付終了時間間際に駆け込むと、その日の受付に間に合わない可能性もあるため注意が必要です。

事前の登記相談は予約がおすすめ

登記申請書の書き方や添付書類に不備がないか不安な場合、法務局に設置されている「登記相談コーナー」で事前に相談することができます。
この登記相談を利用する際は、電話などによる事前予約が強く推奨されます

予約なしで訪問しても相談を受け付けてもらえないわけではありませんが、以下のようなデメリットがあります。

  • 予約者が優先されるため、長時間待たされる可能性がある。
  • 相談員(登記官)が不在または他の相談で対応中の場合、相談自体ができないこともある。
  • 相談時間が限られてしまい、十分に質問できない可能性がある。

一方、事前に予約をしておくことで、専門の登記官があなたの相談のために時間を確保してくれます。

待ち時間なく、落ち着いて書類のチェックを受けたり、疑問点を質問したりできるため、手続きを確実かつスムーズに進めたい方は必ず予約を入れましょう。

なお、法務局での相談は、あくまで提出書類が法的に問題ないか形式的なチェックを行うものです。

「どのような事業目的にすれば良いか」「役員構成はどうすべきか」といった経営判断に関わる内容や、税務に関するアドバイスは受けられない点を理解しておきましょう。

法務局の相談予約方法

登記相談の予約は、本店所在地を管轄する法務局へ直接電話をかけて行います。

ほとんどの法務局で共通する一般的な予約の流れと、予約時に伝えるべき事項を以下にまとめました。

項目内容
予約方法管轄法務局の代表番号へ電話をかけるのが最も一般的です。
伝えるべき事項「株式会社設立の登記相談の予約をしたい」という要件相談希望日時(複数の候補を伝えるとスムーズです)設立する会社の商号(会社名)相談者の氏名と連絡先(電話番号)
予約のタイミング相談希望日の1〜2週間前には連絡することをおすすめします。
法務局によっては予約が埋まりやすいため、早めの行動が肝心です。
相談当日の持ち物作成途中でも構いませんので、完成している範囲の登記申請書類一式を持参してください
定款、発起人の決定書、就任承諾書、払込証明書など、ご自身で準備した書類をすべて持って行くことで、具体的かつ的確なアドバイスを受けられます。

法務局のウェブサイトに相談専用の電話番号が記載されている場合もありますので、電話をかける前に一度、管轄法務局のウェブサイトを確認してみると良いでしょう。

株式会社の設立登記申請、誠にお疲れ様でした。

登記が完了し、会社が法的に誕生したことになります。
しかし、会社として本格的に活動を開始するためには、法務局で取得すべき重要な証明書がいくつかあります。
これらの書類は、銀行口座の開設や税務署への届出など、今後の事業運営に不可欠です。

ここでは、登記完了後に法務局で行うべき手続きを詳しく解説します。

登記事項証明書(登記簿謄本)の取得

登記事項証明書(通称:登記簿謄本)は、会社の商号、本店所在地、役員、資本金などの登記情報が記載された、いわば会社の公的な身分証明書です。

会社を運営していく上で、あらゆる場面で提出を求められます。

具体的には、以下のような手続きで必要となります。

  • 金融機関での法人口座開設
  • 税務署、都道府県税事務所、市町村役場への法人設立届の提出
  • 社会保険(年金事務所)、労働保険(労働基準監督署・ハローワーク)の加入手続き
  • 日本政策金融公庫などからの融資申込
  • 事務所や店舗の賃貸借契約
  • 許認可の申請
  • 補助金・助成金の申請

これらの手続きをスムーズに進めるため、登記が完了したらすぐに複数枚取得しておくことを強くおすすめします。

最低でも3通、今後の取引先の数なども考慮して5通ほど取得しておくと安心です。

登記事項証明書の取得方法は、主に3つあります。

ご自身の状況に合わせて最適な方法を選びましょう。

取得方法手数料(1通あたり)メリットデメリット
法務局の窓口600円即日交付が可能。
申請書の書き方が分からなければその場で質問できる。
法務局の開庁時間内(平日8:30~17:15)に行く必要がある。
混雑している場合がある。
郵送600円法務局へ行く手間が省ける。手元に届くまで数日かかる。
申請書と返信用封筒・切手の準備が必要。
オンライン(登記・供託オンライン申請システム)郵送受取:500円
窓口受取:480円
手数料が最も安い。
24時間いつでも申請可能。
事前の利用者登録や専用ソフトのインストールが必要な場合がある。
郵送の場合は手元に届くまで時間がかかる。

いずれの方法でも「登記事項証明書交付申請書」の提出が必要です。

申請書は法務局の窓口で入手するか、法務局のウェブサイトからダウンロードできます。

会社の印鑑カードの交付申請と印鑑証明書の取得

登記事項証明書と並行して、会社の「印鑑カード」と「印鑑証明書」も必ず取得しましょう。

印鑑証明書は、契約書などに押印された印鑑が、法務局に登録された会社の実印(代表者印)であることを公的に証明する書類です。
特に、不動産取引や高額な融資契約など、重要な契約を締結する際に必須となります。

印鑑カードの交付申請

会社の印鑑証明書を取得するためには、まず「印鑑カード」の交付を受ける必要があります。
このカードがなければ、印鑑証明書を発行することはできません。
登記事項証明書を取得する際に、一緒に手続きを済ませてしまうのが最も効率的です。

印鑑カードの交付申請に必要なものは以下の通りです。

  • 印鑑カード交付申請書:法務局の窓口またはウェブサイトで入手します。会社の商号、本店、代表取締役の氏名・住所・生年月日などを記入し、法務局に届け出た会社実印を押印します。
  • 法務局に届け出た会社実印(代表者印):申請書に押印するために持参します。
  • 代表取締役個人の身分証明書:運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認のために必要となる場合があります。

印鑑カードの交付申請に手数料はかかりません。
無料で発行してもらえます。このカードは会社の財産や権利を守るための鍵となる非常に重要なものです。
紛失や盗難に遭わないよう、金庫などで厳重に保管してください

印鑑証明書の取得

印鑑カードが手に入ったら、それを使って印鑑証明書を取得できます。
法務局の窓口に設置されている「証明書発行請求機」を利用すると、申請書を記入する手間が省け、スムーズに発行できます。

印鑑証明書の取得に必要なものは以下の通りです。

  • 印鑑証明書交付申請書:会社の商号、本店、印鑑提出者(代表取締役)の氏名・生年月日などを記入します。
  • 印鑑カード:このカードを提示(または請求機に挿入)しなければ発行されません。

手数料は1通あたり450円で、収入印紙で納付します。
印鑑証明書も、今後の手続きで必要になる場面が想定されるため、登記事項証明書とあわせて2〜3通取得しておくと良いでしょう。

株式会社の設立登記に関して、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。

費用や期間、万が一のトラブル対応など、事前に把握しておくことでスムーズな手続きにつながります。

株式会社設立にかかる費用は総額いくら?

株式会社の設立には、法務局へ支払う登録免許税のほかにも、定款の認証手数料など、いくつかの法定費用がかかります。
専門家(司法書士など)に依頼せず、ご自身ですべての手続きを行った場合の費用の目安は、最低でも合計で約20万円〜25万円程度を見ておくとよいでしょう。

主な費用の内訳は以下の通りです。
定款を電子定款にするか、紙の定款にするかで総額が変わります。

項目電子定款の場合紙の定款の場合備考
定款用の収入印紙代0円40,000円電子定款の場合は不要です。
定款の認証手数料30,000円~50,000円30,000円~50,000円資本金の額によって変動します。
定款の謄本手数料約2,000円約2,000円1ページあたり250円程度です。
登録免許税最低150,000円最低150,000円資本金の額×0.7%。15万円に満たない場合は15万円です。
合計(目安)約202,000円~約242,000円~電子定款にすることで4万円の費用を削減できます。

上記の法定費用に加えて、会社の実印や銀行印など印鑑の作成費用、発起人や役員の印鑑証明書の取得費用などが別途必要となります。
また、司法書士などの専門家に手続きを代行してもらう場合は、別途報酬が発生します。

申請から登記完了まで何日かかる?

法務局に株式会社設立の登記申請書を提出してから、登記が完了するまでの期間は、一般的に1週間から2週間程度です。

ただし、この期間はあくまで目安であり、申請方法や法務局の混雑状況によって変動します。

特に、大型連休前後や年末年始、会社の設立が多い時期(3月〜4月など)は、通常よりも時間がかかる傾向にあります。

法務局の窓口に直接提出する方法のほか、郵送やオンラインでの申請も可能ですが、郵送の場合は書類が法務局に到着してからの審査となるため、その分日数がかかります。

正確な登記完了予定日は、申請先の法務局のウェブサイトで確認できます。

「登記完了予定日」といった案内が出ていることが多いので、申請後に確認してみましょう。
この完了予定日を過ぎると、登記事項証明書や印鑑証明書が取得できるようになります。

書類に不備があった場合はどうなる?

提出した登記申請書類に誤字脱字や記載漏れ、添付書類の不足などがあった場合、法務局の登記官から電話で連絡が入ります。
この手続きを「補正(ほせい)」と呼びます。

補正の指示があった場合は、焦らずに登記官の指示に従って対応しましょう。

主な対応方法は以下の通りです。

  • 法務局へ出向いて訂正する: 登記官の指示に従い、法務局の窓口で直接書類を修正します。その際は、申請書に使用した会社の実印(届出印)と、訂正を行う人の本人確認書類(運転免許証など)、認印が必要になる場合があります。
  • 郵送で対応する: 軽微な補正の場合や、遠方で法務局へ出向くのが難しい場合、郵送での対応が認められることもあります。登記官に郵送での対応が可能か確認してみましょう。

最も注意すべき点は、補正には期限が設けられていることです。

登記官から指定された期限内に補正が完了しない場合、申請が「取下げ」または「却下」されてしまう可能性があります。

  • 取下げ: 申請者自らの意思で申請を取り下げる手続きです。この場合、納付した登録免許税は、所定の手続きを行えば再利用できる場合があります。
  • 却下: 補正に応じないなど、法的な要件を満たさない場合に、法務局が申請を強制的に終了させる処分です。却下されると、納付した登録免許税は原則として返還されません。

このような事態を避けるためにも、書類の作成は慎重に行い、提出前には複数回チェックすることが重要です。

不安な場合は、法務局の事前相談窓口を利用したり、司法書士などの専門家に相談したりすることも有効な手段です。

本記事では、法務局における株式会社の設立手続きについて、必要書類の準備から登記申請の具体的なステップ、完了後の手続きまでを網羅的に解説しました。

法務局での手続きは複雑に思えるかもしれませんが、一つ一つの手順を確実に踏むことで、ご自身での設立も十分に可能です。

株式会社設立を成功させる鍵は、何よりも事前の準備にあります。ご自身の事業所の所在地を管轄する法務局を調べ、定款や登記申請書、資本金の払込証明書といった必要書類を漏れなく揃えることが最も重要です。

申請方法には法務局の窓口持参、郵送、オンラインの3つの選択肢があり、ご自身の状況に合わせて選ぶことができます。

登記申請そのものに予約は不要ですが、書類の書き方などに不安がある場合は、法務局の無料相談を予約して活用することをおすすめします。

登記が完了したら、登記事項証明書や印鑑カードの取得を忘れずに行い、その後の事業活動に備えましょう。

この記事が、あなたの会社設立の一助となれば幸いです。