合同会社を設立したものの、収入がない期間が続いて不安を感じていませんか?
この記事では、合同会社で収入がない期間が発生する理由、収入がない場合でも支払わなければならない税金、そしてその税金対策について詳しく解説します。
さらに、資金繰りの具体的な方法や、収入がない期間の有効な事業活動についてもご紹介します。
この記事を読むことで、収入がない期間を乗り越えるための具体的な方法を理解し、事業の成功に向けて着実に進むための道筋が見えてきます。
また、必要な届け出についても網羅的に解説しているので、安心して事業を進めることができます。
合同会社で収入がない期間は発生する?
合同会社を設立したものの、実際に事業が軌道に乗るまでには時間がかかり、収入がない期間が発生することは珍しくありません。
特に、創業初期は顧客獲得や販路開拓に苦労し、思うように売上が上がらないケースも少なくありません。
また、季節要因によって売上が変動するビジネスモデルの場合、繁忙期と閑散期で収入に大きな差が生じ、閑散期には実質的に収入がない状態となることもあります。
さらに、事業計画の想定が甘かったり、予期せぬトラブル(例えば、新型コロナウイルス感染症の流行のような外部要因)が発生したりした場合にも、収入が途絶える可能性があります。
フリーランスや個人事業主が合同会社を設立した場合も、当初は顧客基盤が安定しておらず、収入が不安定になりやすい時期があるでしょう。
合同会社は株式会社と同様に法人格を持つため、たとえ収入がなくても、事業を継続していく以上は法人としての維持費用が発生します。
また、後述するように、一定の税金は収入の有無に関わらず納付する必要があります。
そのため、収入がない期間をどれくらい耐えられるかは、事業を継続できるかどうかを左右する重要な要素となります。
資金繰りを綿密に計画し、資金ショートを起こさないよう注意することが大切です。
収入がない期間の長さは、事業内容や経営状況、創業時の自己資金などによって大きく異なります。
一般的に、製造業などは設備投資などに初期費用がかさみやすく、小売業やサービス業などは比較的早く収益化しやすいと言われています。
また、BtoBビジネスは契約締結までに時間がかかることが多く、BtoCビジネスは比較的早く収入を得られる傾向があります。
しかし、これらはあくまで一般的な傾向であり、個々の事業によって状況は大きく異なるため、事業計画を立てる際には綿密な市場調査と現実的な予測に基づいて収益化までの期間を想定することが重要です。
事業形態 | 収入発生までの期間 | 特徴 |
---|---|---|
製造業 | 比較的長い | 設備投資、製品開発などに時間と費用がかかる |
小売業 | 比較的短い | 在庫管理、販売戦略が重要 |
サービス業 | 比較的短い | 顧客ニーズへの対応、サービス品質の向上が重要 |
BtoB | 比較的長い | 営業活動、関係構築に時間がかかる |
BtoC | 比較的短い | マーケティング、広告戦略が重要 |
創業融資などを活用して資金調達を行う場合、事業計画の中で収入が発生するまでの期間と資金繰りについて明確な見通しを示すことが求められます。
金融機関は、返済能力を重視するため、収益化までの道筋が明確でなければ融資を受けられない可能性があります。
そのため、事業計画は実現可能性の高い具体的な内容にすることが重要です。
収入なしでも発生する税金

合同会社であっても、収入がなくても支払わなければならない税金があります。
代表的なものは法人住民税均等割です。
また、消費税の納税義務についても注意が必要です。
法人住民税均等割
法人住民税均等割は、事業年度の開始時点で事業を営んでいる場合、その事業年度の収入の有無に関わらず課税されます。
均等割の税額は、資本金等の額や従業員数、事業所の所在地によって異なります。
東京都23区内では、標準税率で年額7万円です。
資本金の額等 | 従業員数 | 年額 |
---|---|---|
1億円以下 | 従業者数50人以下 | 7万円 |
1億円超 | 従業者数50人以下 | 18万円 |
1億円以下 | 従業者数50人超 | 18万円 |
1億円超 | 従業者数50人超 | 28万円 |
上記の表は東京都23区内の場合の標準税率です。
他の地域では税率が異なる場合がありますので、各自治体に確認する必要があります。
消費税の納税義務
消費税は、原則として課税期間(通常1年間)の課税売上高が1,000万円を超える場合に納税義務が生じます。
しかし、設立1期目と2期目は、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合に納税義務が発生します。
この特定期間とは、設立1期目はその事業年度の開始の日からその事業年度の終了の日までの期間、2期目はその事業年度の開始の日以前の事業年度の開始の日からその事業年度の終了の日までの期間を指します。
つまり、設立1期目、2期目は、短期間で1,000万円を超える売上が発生した場合、消費税の納税義務が生じる可能性があります。
たとえ設立年度に収入がなくても、2期目に1,000万円を超える売上があれば、その2期目に消費税の納税義務が生じます。
また、免税事業者を選択することも可能です。免税事業者を選択した場合、課税売上高が1,000万円以下であれば消費税を納付する必要はありませんが、仕入税額控除を受けることもできません。
そのため、将来的な事業規模の拡大を見据え、どちらが有利かを検討する必要があります。
合同会社 収入なしの場合の税金対策

合同会社で収入がない場合でも、税金対策は重要です。
適切な対策を行うことで、将来の税負担を軽減し、健全な経営基盤を築くことができます。
赤字でも税金対策は必要?
赤字の場合、「税金を払う必要がないから対策は不要」と考えがちですが、これは誤りです。
赤字だからこその税金対策が存在します。
将来の黒字化を見据え、赤字の時期に適切な対策を講じることで、後の税負担を軽減できる可能性があります。
欠損金の繰越控除
欠損金とは、会社の支出が収入を上回った場合の差額のことです。
合同会社で欠損金が発生した場合、将来の課税所得からこの欠損金を控除できる「欠損金の繰越控除」という制度があります。
この制度を利用することで、将来の税負担を軽減することができます。
欠損金の繰越控除には、次の2種類があります。
種類 | 控除期間 | 控除限度額 |
---|---|---|
繰越控除(通常の欠損金) | 9年間 | 各事業年度の課税所得の金額×100% |
青色欠損金の繰越控除 | 9年間 | 各事業年度の課税所得の金額×100% |
青色欠損金の繰越控除を利用するには、青色申告を行う必要があります。
青色申告制度の活用
青色申告は、税務上の特典を受けられる申告制度です。
青色申告を行うことで、以下のようなメリットがあります。
- 65万円の特別控除(e-Taxで申告、かつ貸借対照表を提出する場合)
- 純損失の繰越控除
- 家族への給与を経費に算入(一定の要件を満たす場合)
青色申告承認申請書を提出し、税務署の承認を受ける必要があります。
特に、赤字が出ている場合は、青色申告を選択することで、欠損金を将来に繰り越して、黒字になった時の税負担を軽減できるため、非常に有効な対策となります。
収入なし期間の資金繰り対策

合同会社で収入がない期間は、事業の立ち上げ期や予期せぬ事態など、さまざまな理由で発生する可能性があります。
この時期を乗り切るためには、事前の資金繰り対策が不可欠です。
堅実な資金計画を立て、資金ショートのリスクを最小限に抑えましょう。
自己資金
最も確実な資金源は自己資金です。事業開始前に十分な自己資金を準備しておくことで、収入がない期間も安心して事業を継続できます。
自己資金は、融資を受ける際の信用力向上にも繋がります。
融資
自己資金だけでは資金繰りが難しい場合は、融資の活用を検討しましょう。
代表的な融資制度には、日本政策金融公庫と信用保証協会による保証付き融資があります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、創業融資や新事業育成資金など、さまざまな融資制度を提供しています。
比較的低金利で融資を受けられる可能性があり、創業間もない企業にとって心強い味方となります。
融資を受けるためには、事業計画書や資金繰り計画書など、綿密な準備が必要です。
信用保証協会
信用保証協会は、民間金融機関からの融資を受ける際に保証人となることで、融資を受けやすくする制度です。
信用保証協会の保証があれば、金融機関は融資のリスクを軽減できるため、融資が実行されやすくなります。
保証料が発生しますが、資金調達手段の一つとして検討する価値があります。
補助金・助成金
国や地方自治体では、中小企業の事業活動を支援するために、さまざまな補助金や助成金制度を提供しています。
これらの制度を活用することで、資金調達の負担を軽減できます。補助金・助成金は返済不要な資金であるため、積極的に活用を検討しましょう。
ただし、申請には一定の要件を満たす必要があり、採択される保証もありません。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の経営計画に基づいた販路開拓等の取組みに対する補助金です。
設備投資や広告宣伝費など、幅広い用途に活用できます。
資金調達方法 | メリット | デメリット | 注意点 |
---|---|---|---|
自己資金 | 返済不要、金利なし | 資金が限られる | 事業計画に基づいた適切な資金計画が必要 |
日本政策金融公庫 | 低金利、長期返済可能 | 審査が厳格、保証人や担保が必要な場合も | 事業計画書や資金繰り計画書の綿密な準備が必要 |
信用保証協会 | 融資を受けやすくする | 保証料が発生 | 保証協会の審査が必要 |
補助金・助成金 | 返済不要 | 申請が複雑、採択される保証がない | 要件を満たす必要がある |
収入がない期間の資金繰りは、事業の継続に直結する重要な課題です。
上記の資金調達方法を参考に、自分に合った方法を選択し、資金ショートのリスクを回避しましょう。
資金繰り計画は定期的に見直し、状況に合わせて柔軟に対応することが大切です。
必要に応じて、専門家(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)に相談することも検討しましょう。
▶ 会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
収入がない期間の事業活動

合同会社で収入がない期間は、事業の将来にとって重要な時期です。
この期間を有効に活用することで、今後の事業展開をスムーズに進めるための基盤を築くことができます。
ただ不安に過ごすのではなく、戦略的に時間を使い、将来の成功に繋げましょう。
事業計画の見直し
収入がない時期だからこそ、立ち止まって事業計画を改めて見直す良い機会です。
当初の計画と現状のギャップを分析し、市場のニーズや競合他社の状況を再確認することで、より現実的で効果的な事業計画を策定できます。
具体的には、以下の項目について見直しを行いましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
ターゲット顧客 | 顧客層を再定義し、より具体的なニーズを把握する |
商品・サービス | 提供価値の見直し、改善点の洗い出し、新商品・サービスの開発 |
販売戦略 | オンライン・オフライン、広告、PRなど、販売チャネルの最適化 |
価格設定 | 市場価格、競合価格、原価などを考慮した適正価格の見直し |
収益モデル | 持続可能な収益構造の構築 |
マーケティング活動
収入がない期間でも、マーケティング活動を継続することは非常に重要です。
将来の顧客獲得に向けて、認知度向上や見込み客の獲得に注力しましょう。
限られた予算内で効果的なマーケティング活動を行うためには、Webマーケティングが有効です。
具体的には、以下の施策が考えられます。
- SEO対策:検索エンジンで上位表示されるようウェブサイトを最適化
- コンテンツマーケティング:ブログやSNSで有益な情報を発信し、顧客とのエンゲージメントを高める
- SNSマーケティング:Twitter、Facebook、Instagramなど、適切なプラットフォームで情報発信
- メールマーケティング:見込み客に対して、定期的にメールマガジンなどを配信
これらの活動を通じて、顧客との接点を増やし、信頼関係を構築していくことが重要です。
人脈作り
事業を成功させるためには、人脈は重要な要素です。
異業種交流会やセミナーなどに参加し、積極的に人脈を広げましょう。新たなビジネスパートナーや顧客との出会いに繋がる可能性があります。
また、メンターを見つけ、経営に関するアドバイスや事業ノウハウを学ぶことも有効です。
オンラインコミュニティなども活用し、積極的に情報交換や交流を行いましょう。
具体的には、以下のような活動が考えられます。
- 商工会議所や異業種交流会への参加
- 業界団体主催のセミナーや勉強会への参加
- ビジネスSNS(LinkedInなど)の活用
- オンラインサロンやコミュニティへの参加
人脈作りは、長期的な視点で取り組むことが重要です。
信頼関係を築き、互いに協力し合える関係を構築することで、事業の成長に大きく貢献するでしょう。
合同会社 収入なしでも届け出は必要?

合同会社で収入がなくても、法令で定められた届け出は必ず行う必要があります。
収入の有無に関わらず、会社を設立した以上、事業の実態を適切に報告する義務があります。
届け出を怠ると、罰則が科される可能性もあるため、注意が必要です。
主な届け出は以下のとおりです。
決算書の提出義務
合同会社は、たとえ収入がなくても、毎年1回、決算書を作成し、所轄の税務署に提出する義務があります。
「収入がないからといって決算書を作成する必要がない」と勘違いされる方もいますが、これは誤りです。
収入がなくても、経費の支出や資産の変動がある場合もあります。
これらの情報を正確に記録し、決算書に反映させる必要があります。
決算書は、会社の経営状況を客観的に把握するための重要な資料です。
また、金融機関からの融資を受ける際や、投資家への説明資料としても活用されます。
収入がない場合でも、将来の事業展開を見据えて、適切な決算処理を行うことが重要です。
提出書類 | 提出先 | 提出期限 |
---|---|---|
決算報告書 | 登記所 | 事業年度終了日から2ヶ月以内 |
法人税申告書 | 税務署 | 事業年度終了日から2ヶ月以内 |
法人住民税申告書 | 都道府県・市町村 | 事業年度終了日から2ヶ月以内 |
税務申告
合同会社は、収入の有無に関わらず、法人税、法人住民税、消費税などの税務申告を行う必要があります。
「収入がないので税金は発生しない」と考えて申告を怠ると、加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。
収入がなくても、法人住民税の均等割のように、一定額が課税される税金もあります。
また、消費税についても、課税事業者である場合は、申告が必要です。
税務申告は複雑な手続きとなる場合もあるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
専門家のサポートを受けることで、正確な申告を行い、税務リスクを軽減することができます。
▶ 会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
税目 | 申告書 | 提出先 | 提出期限 |
---|---|---|---|
法人税 | 法人税申告書 | 税務署 | 事業年度終了日から2ヶ月以内 |
法人住民税 | 法人住民税申告書 | 都道府県・市町村 | 事業年度終了日から2ヶ月以内 |
消費税 | 消費税申告書 | 税務署 | 事業年度終了日から2ヶ月以内 |
これらの届け出は、事業の継続性や信頼性を維持するために非常に重要です。
収入がない期間であっても、適切な手続きを行うことで、将来の事業展開をスムーズに進めることができます。
また、法令遵守の観点からも、必要な届け出は確実に行いましょう。
まとめ
合同会社で収入がない期間が発生した場合でも、法人住民税均等割などの税金が発生するケースがあります。
また、消費税の納税義務についても注意が必要です。
収入がない期間でも、欠損金の繰越控除や青色申告制度を活用した税金対策を行うことができます。
資金繰り対策としては、自己資金の活用、日本政策金融公庫や信用保証協会からの融資、小規模事業者持続化補助金などの活用が考えられます。
さらに、事業計画の見直しやマーケティング活動、人脈作りなど、将来の収入獲得に向けた活動も重要です。
決算書の提出や税務申告など、収入がなくても必要な手続きがあることも忘れてはいけません。
これらの対策を適切に行うことで、収入がない期間を乗り越え、事業の成長につなげることが可能になります。