株式会社設立時の株価設定に悩んでいませんか?
株価は資本金と発行株式数を決めれば算出できますが、その金額が将来の資金調達や事業承継に大きく影響するため、安易な決定は禁物です。
本記事では、初心者でも失敗しない株価の決め方を具体的な3つのステップで解説します。
この記事を読めば、適切な株価設定の知識が身につき、スムーズに会社設立手続きを進められるようになります。
株式会社設立時に株価の決め方が重要な理由
株式会社の設立準備を進める中で、「資本金はいくらにしようか」と考える方は多いですが、「1株あたりの株価」については深く考えずに決めてしまうケースが少なくありません。
しかし、この設立時の株価設定は、会社の現在と未来に大きな影響を及ぼす非常に重要な決定事項です。
安易に決めてしまうと、将来の資金調達が難しくなったり、事業承継の際に思わぬ税金問題に直面したりする可能性があります。
なぜ株価の決め方がそれほど重要なのか、その理由を2つの側面から詳しく解説します。
資本金と発行株式数を繋ぐのが株価
会社の設立時に払い込まれる資本金は、以下の計算式で成り立っています。
◆ 資本金の額 = 1株あたりの株価 × 発行する株式の数
この式からも分かるように、株価は「資本金」と「発行株式数」という2つの重要な要素を繋ぐ役割を担っています。
たとえば、資本金を100万円にすると決めた場合でも、株価の設定次第で発行する株式数が大きく変わります。
資本金 | 1株あたりの株価 | 発行株式数 |
---|---|---|
100万円 | 5万円 | 20株 |
100万円 | 1万円 | 100株 |
100万円 | 1円 | 100万株 |
このように、同じ資本金額でも、株価を1円にすれば発行株式数は100万株にもなります。
発行株式数が多すぎると、株主名簿の管理が煩雑になったり、一株あたりの価値が分かりにくくなったりする可能性があります。
逆に、発行株式数が少なすぎると、株式の譲渡や複数人での出資がしにくくなる場面も考えられます。
株価は、資本金と発行株式数のバランスを決定づける、会社の根幹に関わる数字なのです。
将来の資金調達や事業承継にも影響する
設立時に決めた株価は、その後の会社の経営戦略に長期的な影響を与えます。
特に「資金調達」と「事業承継」という2つの重要な局面で、設立時の株価設定が大きく関わってきます。
設立時の株価設定が将来に与える影響を、以下の表にまとめました。
設立時の株価設定 | 将来の資金調達(増資)への影響 | 将来の事業承継・相続への影響 |
---|---|---|
株価が低すぎる(例: 1円) | 外部から出資を受ける際、大量の株式を発行する必要があり、創業者(経営者)の持株比率が大幅に低下(希薄化)するリスクが高まります。 | 会社の業績が向上し株価が上昇した際、株式の評価総額が非常に高額になります。その結果、贈与税や相続税の負担が想定以上に重くなる可能性があります。 |
株価が高すぎる(例: 100万円) | 1株あたりの金額が大きいため、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が出資しにくくなります。少額での資金調達の選択肢が狭まり、機動的な資金繰りが難しくなる場合があります。 | 1株単位での贈与や相続が難しくなり、柔軟な承継計画が立てにくくなります。また、従業員へのインセンティブとしてストックオプションを付与する際にも、設計の自由度が下がります。 |
このように、設立時の株価は単なる「設立手続きの一つ」ではありません。
会社の成長フェーズやライフサイクルの変化に対応するための重要な布石となります。
後から株価(株式数)を変更するには、株式分割や株式併合といった法的な手続きが必要となり、時間もコストもかかります。
だからこそ、設立段階で将来を見据えた適切な株価を設定することが、失敗しない会社設立の鍵となるのです。
【ステップ1】株価を決める前に知るべき基礎知識

株式会社を設立する際、株価をいくらにするかは、資本金や発行株式数と並んで最初に決めるべき重要な項目です。
しかし、なぜ株価を決める必要があるのか、そもそも株価とは何なのか、疑問に思う方も多いでしょう。
このステップでは、具体的な計算方法に入る前に、株価に関する基本的な知識を分かりやすく解説します。
これらの知識は、後々の資金調達や事業承継といった会社の未来を左右する重要な場面で必ず役立ちます。
まずは基礎をしっかりと固めましょう。
株式会社設立における1株あたりの株価とは
株式会社設立時における「1株あたりの株価」とは、出資者が1株の株式を取得するために会社に払い込む金額のことを指します。
これは「払込金額」とも呼ばれ、会社の価値を株式数で割ったものと考えることができます。
例えば、発起人(会社を設立する人)が100万円を資本金として出資し、100株の株式を発行する場合、以下のようになります。
◆ 100万円(資本金) ÷ 100株(発行株式数) = 1万円(1株あたりの株価)
この場合、発起人は1株あたり1万円を会社に払い込むことで、株式を取得します。
現在の会社法では、設立時の株価は法律で定められておらず、発起人が自由に決めることができます。
かつて存在した「額面株式(1株の券面額が定款で定められている株式)」は廃止され、現在はすべて「無額面株式」となっています。
そのため、会社の状況や将来の計画に応じて、最適な株価を戦略的に設定することが可能です。
発行可能株式総数と発行済株式数の違い
株価を考える上で、必ず理解しておきたいのが「発行可能株式総数」と「発行済株式数」という2つの言葉です。
これらは似ているようで全く異なる意味を持ち、会社の将来の柔軟性を決める重要な要素となります。
両者の違いを以下の表にまとめました。
項目 | 発行可能株式総数 | 発行済株式数 |
---|---|---|
意味 | 会社が将来的に発行できる株式の上限数(枠) | 会社設立時に実際に発行され、出資者が引き受けた株式の総数 |
定款への記載 | 必須(絶対的記載事項)。記載がないと定款が無効になる。 | 定款への記載は任意。ただし、設立登記の申請書には記載が必要。 |
決めるタイミング | 定款作成時 | 会社設立時 |
変更方法 | 株主総会の特別決議を経て、定款変更と変更登記が必要。 | 増資(新株発行)を行うことで増加する。取締役会(設置会社の場合)または株主総会の決議が必要。 |
ポイントは、発行可能株式総数は、将来の資金調達(増資)のためにあらかじめ用意しておく「枠」だということです。
例えば、設立時に発行済株式数を100株、発行可能株式総数を1,000株と定款で定めておけば、将来資金が必要になった際に、定款を変更することなく、取締役会の決議だけで残り900株の範囲内で新株を発行できます。
これにより、機動的な資金調達が可能になります。
一般的には、設立時の発行済株式数の4倍から10倍程度を発行可能株式総数として設定するケースが多く見られます。
会社設立時の株価相場は1万円か5万円が多い理由
前述の通り、設立時の株価は自由に設定できますが、実務上は「1株1万円」または「1株5万円」に設定されることが圧倒的に多いです。
これには明確な理由があります。
第一に、資本金や出資比率の計算が非常に分かりやすくなるからです。
例えば、資本金300万円で株価を1万円に設定した場合、発行株式数は300株となります。
誰が何株持っているかが直感的に把握でき、経営権の割合を示す持株比率の計算も容易になります。
株価が中途半端な数字だと、こうした計算が煩雑になり、管理上のミスを招く原因にもなりかねません。
第二に、将来の株式譲渡やストックオプション設計のしやすさが挙げられます。
株価が極端に高いと、少額の株式を譲渡することが難しくなります。
逆に、株価が低すぎると発行株式数が膨大になり、管理コストが増大します。
1万円や5万円という株価は、こうした将来の資本政策を考える上で、バランスの取れた扱いやすい金額なのです。
また、かつての旧商法では、1株の額面を5万円以上とすることが原則だった時代があり、その名残で5万円という設定が今でも好まれる傾向があります。
株価を1円に設定するメリットとデメリット
理論上は、株価を1円に設定することも可能です。実際に、特定の目的を持って株価を1円にする会社も存在します。
しかし、安易に設定するとデメリットも大きいため、メリットとデメリットを正しく理解しておく必要があります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
株式の流動性 | 1株単位での細かな譲渡や、従業員へのストックオプション設計がしやすい。 | 発行株式数が膨大になり、株主名簿の管理や株主総会の運営など、事務手続きが煩雑になる。 |
発行株式数 | 同じ資本金でも非常に多くの株式を発行できるため、クラウドファンディングなどで多数の出資者を募りやすい。 | 資本金300万円の場合、300万株となり、桁数が多く計算ミスを誘発しやすい。 |
対外的な印象 | (特に大きなメリットはない) | 「1株=1円の会社」というイメージが先行し、会社の価値が低く見られたり、信用力が低いと判断されたりする可能性がある。 |
結論として、株価1円での設立は、将来的に多数の株主を迎える計画があるなど、明確な戦略的意図がある場合に限定すべきです。
特に理由がないのであれば、管理のしやすさや対外的な信用を考慮し、1万円や5万円といったキリの良い数字に設定することをお勧めします。
【ステップ2】具体的な株式会社設立時の株価の決め方

会社の基礎知識を理解したところで、いよいよ具体的な株価の決め方に進みましょう。
株式会社設立時の株価は、実は非常にシンプルな計算式で算出できます。
しかし、その計算の元となる「資本金額」と「発行する株式数」をどのように決めるかが極めて重要です。
このステップでは、論理的かつ実践的な手順に沿って、誰でも迷わず株価を決定できる方法を解説します。
まず設立時の資本金額を決める
株価を決める最初のステップは、会社の土台となる「資本金」の額を決定することです。
資本金は、事業を始めるための元手であり、会社の体力や社会的信用度を示す重要な指標となります。
会社法では資本金1円からでも株式会社を設立できますが、現実的にはいくつかの観点から慎重に金額を決定する必要があります。
資本金額を決定する際の主な判断基準は以下の通りです。
- 事業計画に必要な初期費用と運転資金: 会社の設立費用はもちろん、事業が軌道に乗るまでの数ヶ月間(一般的には3ヶ月〜6ヶ月分が目安)の運転資金(家賃、人件費、仕入れ費用など)をカバーできる金額を基準に考えます。
- 許認可の要件: 建設業や人材派遣業、古物商など、特定の事業を行うためには、法律で定められた最低資本金額をクリアする必要があります。ご自身の事業に必要な許認可の要件を事前に必ず確認しましょう。
- 金融機関からの融資: 将来的に日本政策金融公庫や銀行からの融資を検討している場合、資本金は自己資金として評価されます。資本金が多いほど会社の財務基盤が安定していると見なされ、融資審査で有利に働く可能性があります。
- 対外的な信用度: 資本金の額は登記事項証明書(登記簿謄本)に記載され、誰でも閲覧できます。取引先や顧客からの信用を得るためには、事業規模に見合ったある程度の資本金を設定することが望ましいでしょう。
- 消費税の免税事業者: 資本金が1,000万円未満の場合、原則として設立から最大2事業年度は消費税の納税が免除されるという大きなメリットがあります。これは設立時の資金繰りに大きく影響するため、特別な理由がない限り、資本金は1,000万円未満に設定するのが一般的です。
次に発行する株式数を決める
資本金額が決まったら、次にその資本金に対して「何株の株式を発行するか」を決定します。
この発行株式数は、出資者間の持分割合を決めたり、将来の資金調達(増資)のしやすさにも影響したりする重要な要素です。
発行株式数を決める際は、以下の点を考慮しましょう。
- キリの良い数字にする: 計算がしやすく、管理が容易になるため、100株、500株、1,000株といったキリの良い数字に設定するのが一般的です。
- 出資者(発起人)の数と出資比率: 複数人で出資して会社を設立する場合、それぞれの出資額に応じて株式を割り当てる必要があります。例えば、Aさんが200万円、Bさんが100万円を出資する場合、発行株式数を300株にすれば、Aさん200株、Bさん100株とスムーズに配分できます。このように、出資比率を分かりやすく表現できる株式数に設定することが重要です。
- 将来の資金調達やストックオプションを考慮する: 将来、第三者割当増資で新たな出資者を募ったり、従業員にストックオプションを付与したりする可能性を考慮すると、ある程度の株式数を設定しておくと柔軟な対応がしやすくなります。発行済株式数が少なすぎると、1株あたりの価値が高くなりすぎ、細かな持分割合の調整が難しくなる場合があります。
資本金を発行株式数で割って株価を計算する
「資本金額」と「発行する株式数」が決まれば、株価の計算は簡単です。
以下の計算式で1株あたりの株価(専門的には「払込金額」といいます)を算出します。
◆ 1株あたりの株価 = 資本金 ÷ 発行する株式数
この計算を行う上で最も大切なことは、計算結果が割り切れる数字になるように、資本金額と発行株式数を調整することです。
例えば、資本金300万円で発行株式数を130株にすると、1株あたりの株価が23,076.923…円のように割り切れない数字になってしまい、手続きが非常に煩雑になります。
このような事態を避けるため、株価が1円単位で割り切れるように設定してください。
計算例 資本金が300万円の場合の株価の決め方
それでは、資本金を300万円と設定した場合の具体的な計算例をいくつか見てみましょう。
どのパターンがご自身の会社にとって最適かを考える参考にしてください。
パターン | 発行する株式数 | 1株あたりの株価(計算式) | 特徴 |
---|---|---|---|
パターン1(一般的) | 300株 | 10,000円(300万円 ÷ 300株) | 1株1万円は非常にポピュラーな設定です。計算がしやすく、多くの会社で採用されています。迷ったらこの設定がおすすめです。 |
パターン2(一般的) | 60株 | 50,000円(300万円 ÷ 60株) | 旧商法の名残で、1株5万円もよく見られる設定です。株数が少なく管理しやすいメリットがあります。 |
パターン3 | 3,000株 | 1,000円(300万円 ÷ 3,000株) | 株価を低く設定し、株式数を多くするパターンです。将来、多くの従業員にストックオプションを付与したい場合などに向いています。 |
パターン4 | 100株 | 30,000円(300万円 ÷ 100株) | 発行株式数をキリの良い100株にしたい場合の設定です。株価も割り切れるため、問題なく設定できます。 |
このように、同じ資本金300万円でも、発行株式数の設定次第で株価は変わります。
ご自身の会社の規模や将来の展望、出資者の構成などを総合的に考慮して、最適な組み合わせを決定しましょう。
【ステップ3】決めた株価で定款作成と登記手続きを行う

ステップ1とステップ2で資本金、発行株式数、そして1株あたりの株価が決定したら、次はいよいよ会社設立の具体的な手続きに進みます。
決めた株価は、会社の根本規則である「定款」に記載し、法務局へ「設立登記」を申請することで法的に確定します。
このステップは、会社の骨格を法的に固める非常に重要なプロセスです。
手続きに不備があると、設立が遅れたり、余計な手間や費用が発生したりする可能性があるため、慎重に進めましょう。
定款への記載事項と注意点
定款は「会社の憲法」とも呼ばれる、会社の組織や運営に関する基本的なルールを定めた書類です。
株式会社を設立する際には、必ず作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
株価に関連する情報は、この定款に正確に記載しなければなりません。
定款に記載すべき、株価や株式に関連する主な項目は以下の通りです。
- 発行可能株式総数:会社が将来発行できる株式の上限数です。これは必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」です。設立時には、実際に発行する株式数(設立時発行株式数)の4倍程度に設定するケースが一般的ですが、非公開会社の場合は特に上限の定めはありません。
- 設立に際して発行する株式の総数:会社設立時に発起人が引き受ける株式の総数です。
- 1株の払込金額(株価):ステップ2で計算した1株あたりの金額です。
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額:設立時の資本金の額を指します。
定款作成にあたっては、作成した定款を公証役場に持ち込み、公証人の認証を受ける必要があります。
この認証がなければ、定款は法的な効力を持ちません。
なお、紙の定款で認証を受ける場合は収入印紙代として4万円が必要ですが、電子定款で認証を受ければこの印紙代は不要になります。
手続きの正確性を期すため、司法書士などの専門家に作成や認証手続きを依頼することも有効な選択肢です。
登記申請で必要となる株価に関する情報
定款の認証が完了したら、次はいよいよ法務局へ株式会社の設立登記を申請します。
この登記申請が受理されて初めて、法的に会社が成立します。
登記申請には、決めた株価や資本金が正しく払い込まれたことを証明する書類が必要です。
登記申請において、株価や資本金に関連して必要となる主な書類は以下の通りです。
書類名 | 記載・関連する株価情報 | ポイント |
---|---|---|
設立登記申請書 | 資本金の額、発行済株式の総数 | 会社の基本情報を記載するメインの書類。計算ミスがないよう正確に記入します。 |
定款 | 発行可能株式総数、設立時発行株式数、1株の払込金額 | 公証人による認証を受けたものを添付します。 |
発起人の決定書(または発起人会議事録) | 本店所在地、設立時発行株式に関する事項(株式数、払込金額、資本金の額など) | 発起人全員の同意で定款に記載した事項を決定したことを証明します。 |
払込証明書 | 払い込まれた総額(資本金の額) | 発起人の個人口座に資本金が振り込まれたことを証明する書類です。通帳のコピーなどを添付して作成します。払込総額が「1株の価額 × 発行株式数」と一致していることが必須です。 |
資本金の額の計上に関する証明書 | 資本金の額が会社法および会社計算規則に従って計上されたことの証明 | 代表取締役が作成し、払込があった金額のうち、いくらを資本金として計上したかを証明します。 |
これらの書類を揃え、本店所在地を管轄する法務局に提出します。
設立登記の申請は、資本金の払込みがあった日から2週間以内に行わなければならないという期限が定められているため、計画的に準備を進めることが重要です。
登記手続きは専門的な知識を要するため、不備なくスムーズに設立を完了させたい場合は、司法書士に依頼するのが一般的です。
株式会社設立時の株価の決め方でよくある質問

株式会社設立時の株価設定に関して、多くの方が抱く疑問について解説します。
手続きを進める前に不安な点を解消しておきましょう。
株価はあとから変更できますか
この質問には、2つの側面から回答する必要があります。
結論から言うと、設立時に定めた「1株あたりの払込金額」そのものを後から変更することはできません。
しかし、会社の成長に伴って変動する「株式の価値」を調整する方法は存在します。
設立時の株価は、あくまで「資本金 ÷ 発行済株式数」で算出された、会社設立時点での形式的な価格です。
会社が事業活動を行い、利益を上げて成長すれば、会社の価値(企業価値)は向上し、それに伴い1株あたMりの実質的な価値も上昇します。
将来、増資によって新たに株式を発行する際の株価(発行価額)は、設立時の株価ではなく、その時点での企業価値を基に算定されるのが一般的です。
また、既存の株式の価値を調整する方法として「株式分割」や「株式併合」があります。
手続きの種類 | 概要 | 目的・効果 |
---|---|---|
設立時の株価設定 | 資本金と発行株式数から1株あたりの払込金額を決定する、設立時のみの手続き。 | 会社の基礎となる資本構成を確定させる。 |
増資(資金調達時) | 新たに株式を発行して資金を調達する。その際の株価は、その時点の企業価値を基に決定される。 | 事業拡大のための資金調達。設立時の株価よりも高くなることが多い。 |
株式分割 | 1株を複数の株式に分割すること。例えば1株を2株に分割すると、発行済株式数は2倍になり、1株あたりの価値は半分になる。 | 株価を下げて流動性を高める(売買しやすくする)。 |
株式併合 | 複数の株式を1株に統合すること。例えば5株を1株に併合すると、発行済株式数は5分の1になり、1株あたりの価値は5倍になる。 | 株式管理のコストを削減する、少数株主を整理する等の目的で利用される。 |
このように、設立時の株価は固定されますが、会社の状況に応じて株式の価値や数を調整する方法は複数存在します。
複数人で出資する場合の株価の決め方は
複数人の発起人(出資者)で会社を設立する場合でも、株価の決め方の基本原則は一人で設立する場合と全く同じです。
最も重要なルールは、設立時の1株あたりの払込金額は、すべての発起人で同一でなければならないということです。
出資額に応じて株価を変えることはできません。
その代わり、出資額に応じて割り当てる株式数を変えることで公平性を保ちます。
例えば、資本金500万円の会社をAさんとBさんの2人で設立するケースを考えてみましょう。
計算例:資本金500万円、株価を1万円に設定した場合
- 1株あたりの株価:10,000円
- 発行する株式総数:500万円 ÷ 10,000円 = 500株
この500株を、それぞれの出資額に応じて割り当てます。
- Aさんが300万円出資する場合:300万円 ÷ 10,000円 = 300株(持株比率60%)
- Bさんが200万円出資する場合:200万円 ÷ 10,000円 = 200株(持株比率40%)
このように、株価は全員共通とし、出資額に比例した株式数を割り当てます。
この持株比率が、株主総会での議決権の割合となり、会社の経営方針を決定する上で非常に重要になります。
将来の経営権トラブルを避けるためにも、出資比率(持株比率)については、設立メンバー間で十分に話し合って決定してください。
税理士や司法書士など専門家には相談すべきか
結論として、会社設立の手続き、特に資本金や株価の決定については、専門家に相談することを強く推奨します。
自分で行うことも可能ですが、後々の税務や法務のリスクを考えると、設立段階で専門家のアドバイスを受けるメリットは非常に大きいです。
主に相談すべき専門家は、司法書士と税理士です。
それぞれの役割と相談するメリットは以下の通りです。
専門家 | 主な役割と相談内容 | 相談するメリット |
---|---|---|
司法書士 | 会社設立の登記手続きの専門家。定款の作成・認証、登記申請書類の作成・提出代行など、法的に不備のない設立手続き全般をサポート。 | 法的に有効な定款を確実に作成できる。複雑で時間のかかる登記手続きを任せられる。手続き上のミスを防ぎ、スムーズな会社設立が実現できる。 |
税理士 | 税務と会計の専門家。資本金の額が消費税の納税義務に与える影響、役員報酬の設定、創業融資の相談、設立後の会計処理や税務申告など、お金に関する幅広い相談に対応。 | 節税を考慮した最適な資本金額のアドバイスがもらえる。創業融資や補助金・助成金の申請サポートを受けられる場合がある。設立後の経理や税務顧問も依頼でき、事業に集中できる。 |
特に、資本金の額は設立1期目、2期目の消費税の納税義務に影響を与える可能性があります。
また、将来の資金調達や事業承継を見据えた場合、適切な発行株式数や株価の設定は非常に重要です。
費用はかかりますが、専門家の知見を活用することで、将来起こりうるリスクを回避し、事業の成長を円滑に進めるための土台を築くことができます。
まとめ
本記事では、株式会社設立時の株価の決め方を3つのステップで解説しました。
株価は「資本金 ÷ 発行株式数」で算出され、会社の価値を示す重要な指標です。
安易に決めると将来の資金調達や事業承継で不利になる可能性があるため、設立時の資本金額と発行株式数を慎重に検討することが重要です。
決めた株価は定款に記載し登記します。
判断に迷う場合は、税理士や司法書士といった専門家への相談も有効な手段となります。