副業の収入が増えると「いつ会社設立(法人化)すべきか」「本業の勤務先にバレないか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
副業で会社設立を判断する目安は「年間売上1,000万円」または「所得800万円」の達成時です。
本記事では、個人事業主との違いや節税メリット・維持コストの比較から、会社バレを防ぐ役員報酬の設定方法、設立登記の具体的な手順まで網羅して解説します。
最適なタイミングを見極め、損をせずスムーズに法人化を進めたい方はぜひ参考にしてください。
1. 副業で会社設立を検討すべきタイミングと売上・所得の目安
副業の規模が拡大してきた際、どの段階で個人事業主から法人成りすべきかは多くの人が悩むポイントです。
会社設立には設立費用や維持コストがかかるため、適切なタイミングを見極めなければかえって税負担や管理コストが増加するリスクがあります。
法人化を検討する際の判断材料として、税制上の分岐点や事業環境の変化を踏まえた具体的な目安を把握しておくことが重要です。
1.1 売上高1000万円または所得800万円が法人化の判断基準
副業の法人化を検討する最も一般的な指標が、「副業の年間売上高が1000万円を超えたとき」または「年間の課税所得が800万円を超えたとき」です。
この2つの基準には、それぞれ消費税と所得税・法人税の税率差に関する明確な理由が存在します。
個人の所得税は累進課税制度が採用されており、課税所得金額が高くなるにつれて税率が5%から最高45%まで上がります。
これに住民税10%が加わるため、最高税率は55%に達します。
一方で、普通法人の法人税率は中小法人の場合、年800万円以下の所得に対しては15%(適用除外事業者を除く軽減税率)、年800万円を超える部分に対しても23.2%の税率が適用されます。
各種法人住民税や事業税を合わせた実効税率を考慮しても約25%〜34%前後に収まるため、課税所得が800万円から900万円前後を超える段階で個人事業主よりも法人の方が税負担を抑えやすくなります。
また、個人事業主としての課税売上高が1000万円を超えると、原則として翌々年から消費税の課税事業者に転換されます。
このタイミングで新しく資本金1000万円未満の法人を設立すると、設立当初の最大2年間は消費税の納税義務が免除される特例(※特定期間の売上や給与支払額などの判定要件あり)を活用できる場合があり、大きなキャッシュフロー上のメリットが生まれます。
| 判断基準の指標 | 主な税制上の理由 | 法人化による主な効果 |
|---|---|---|
| 課税所得800万円超 | 所得税(累進税率)と法人税率の逆転 | 実効税率が下がり、手元に残る利益が増加する |
| 課税売上1000万円超 | 2年後の消費税課税事業者化 | 法人設立により一定期間の免税事業者期間を再適用できる可能性がある |
1.2 インボイス制度への対応が迫られたとき
BtoB(企業間取引)を中心に副業を展開している場合、インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応が会社設立の強力なトリガーとなります。
取引先が企業(課税事業者)である場合、インボイス(適格請求書)を発行できない免税事業者との取引では仕入税額控除が制限されるため、取引価格の引き下げ要請や取引停止のリスクに直面する可能性があります。
この問題を回避するために適格請求書発行事業者の登録を行うと、売上高が1000万円以下であっても消費税の申告・納税義務が発生します。
免税事業者としてのメリットを維持できず、いずれにしても消費税を納める必要があるのであれば、個人事業主のまま登録するのではなく、法人化して対外的な信用力を高めつつ、経費算入の自由度や節税策の選択肢を増やす判断が合理的となるケースが増加しています。
1.3 副業の年間所得が安定して黒字化したとき
税率の分岐点や制度対応だけでなく、事業としての収益安定性も法人化には不可欠な要素です。
単発の大型案件などによって一時的に所得が跳ね上がっただけで会社を設立してしまうと、翌年以降の売上減少時に固定コストが重荷になります。
会社を設立すると、たとえ決算が赤字であっても、法人住民税の均等割(資本金1000万円以下・従業員50人以下の中小企業で年間約7万円)を毎年納め続けなければなりません。
さらに、複雑な法人税申告を税理士へ委任するための顧問料や決算報酬といったランニングコストも発生します。
そのため、副業の年間所得が2期から3期連続で黒字を維持しており、今後も安定した継続収入が見込める状態になってから会社設立へ踏み切ることが、長期的に損をしないための着実な判断基準となります。
2. 副業で会社設立するメリット

副業の利益が大きくなってきた段階で法人化を選択すると、個人事業主のまま活動を続ける場合と比較して、税務面や事業展開において数多くの利点が得られます。
副業を法人化することで得られる最大のメリットは、税負担の最適化と事業の拡大スピードを大幅に加速させられる点にあります。
2.1 所得税と法人税の税率差による高い節税効果
個人の所得に対して課される所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる「超過累進税率」が採用されています。
住民税と合わせると最高税率は55%に達します。
一方で、法人に対して課される法人税(法人実効税率)は原則として比例税率であり、中小法人の場合は利益水準に応じて約22%〜34%程度の一定範囲に収まります。
そのため、副業による所得が高額になるほど、個人事業主として確定申告を行うよりも法人税率を適用したほうが手元に残る資金を大幅に増やせるようになります。
| 区分 | 個人(所得税+住民税) | 法人(実効税率) |
|---|---|---|
| 課税方式 | 超過累進税率(所得に応じて上昇) | 比例税率(一定水準以上はほぼフラット) |
| 最低税率 | 約15%(所得税5%+住民税10%) | 約22%〜25%(年800万円以下の部分) |
| 最高税率 | 約55%(所得税45%+住民税10%) | 約34%前後(超過部分含む実効税率) |
このように、所得が一定ラインを超えた段階で会社を設立すれば、税率の差額分だけダイレクトに手取りを最大化させることが可能です。
2.2 経費にできる支出の範囲が個人事業主より広がる
法人を設立すると、個人事業主では認められない、あるいは按分比率が厳しく制限される支出項目を幅広く会社の損金(経費)として計上できるようになります。
代表的な例として「役員社宅制度」があります。会社名義で賃貸物件を契約し、役員に対して社宅として貸し出す形式をとることで、家賃の相当割合を法人の経費に算入しつつ、個人の生活費負担を大幅に削減できる仕組みです。
個人事業主の家賃按分よりも経費算入のハードルが低く、高い節税効果を発揮します。
さらに、出張旅費規程を整えることで支給できる「出張日当」は、法人側では全額経費となり、受け取る個人側でも所得税が非課税となるなど、法人ならではの経費計上の選択肢が豊富に用意されています。
2.3 役員報酬の設定や所得分散による税金対策
副業の事業所得を会社の売上とし、そこから自身や家族に対して「役員報酬」を支払うことで、個人の給与所得控除を活用できます。
会社の利益を役員報酬として分配すれば、会社側では経費(損金)扱いとなり法人税を抑えられ、個人側でも給与所得控除が適用されることで所得全体の課税ベースを圧縮できます。
また、事業を手伝っている配偶者や親族を役員や従業員として登用し、業務実態に応じた適正な給与を支給することで「所得分散」が実現します。
一人に集中していた高い所得を複数人に分散させることで、超過累進税率による高い税率の適用を回避し、世帯全体で支払う税金や社会保険料の負担を最適化できます。
2.4 社会的信用が高まり取引先の新規開拓が有利になる
会社を設立して法人登記を行うと、法的な情報が開示され事業の実態が公に証明されるため、個人事業主と比べて社会的信用が飛躍的に向上します。
企業によっては、コンプライアンスやガバナンスの観点から「個人事業主・フリーランスとは直接契約せず、法人のみと取引する」と社内規定で定めているケースが少なくありません。
法人格を取得していることで大手企業や優良企業との直接取引がスムーズになり、受注単価の向上や新規販路の開拓が有利に運ぶようになります。
また、事業用銀行口座の開設や法人クレジットカードの発行、将来的な金融機関からの資金調達(融資)においても、法人のほうが実績を積み重ねやすく、ビジネスの成長スピードを加速させる強力な基盤となります。
3. 副業での会社設立に伴うデメリットと維持コスト

副業の法人化には高い節税効果や信用力の向上といった利点がある一方で、個人事業主のときには発生しなかった継続的な支出や手続きの負担が生じます。
会社を設立すると利益の有無にかかわらず発生する維持コストが存在するため、事前にリスクと費用を把握しておくことが重要です。
3.1 法人住民税均等割など赤字でも発生する固定費
個人事業主であれば事業が赤字の場合は所得税や住民税の負担を大幅に軽減できますが、法人の場合はそうはいきません。
法人は事業活動を行っている自治体に対して地方税を納める義務があり、その中には利益がゼロや赤字であっても必ず毎年納付しなければならない法人住民税の均等割が含まれます。
一般的に、資本金1,000万円以下かつ従業員数50人以下の小規模法人の場合、都道府県民税と市町村民税を合わせて年間で最低約7万円の均等割が発生します。
この固定費に加えて、法人口座の維持手数料やオフィスの管理費など、会社を維持するだけでも以下のような継続的なランニングコストがかかります。
| 維持費用の項目 | 発生頻度 | 費用の目安(年間) | 内容と特徴 |
|---|---|---|---|
| 法人住民税(均等割) | 年1回 | 約7万円〜 | 赤字決算であっても納税が義務付けられている地方税 |
| 税理士顧問料・決算料 | 毎月または年1回 | 約15万〜30万円 | 法人の決算申告書作成や税務相談に伴う専門家への報酬 |
| バーチャルオフィス等の利用料 | 毎月 | 約1万〜6万円 | 自宅住所を公開せず本店所在地として登記する場合の費用 |
| 法人用銀行口座の維持費 | 毎月または年1回 | 0円〜約3万円 | インターネットバンキングの利用手数料など(金融機関による) |
3.2 設立手続きの初期費用と登記の手間
会社を設立するには、法務局へ登記申請を行うための初期費用と煩雑な準備作業が必要です。
個人事業主の開業手続きが開業届を税務署へ提出するだけで費用もかからないのに対し、法人の設立では法定費用だけで数万円から十数万円以上のまとまった資金が必要になります。
例えば株式会社を設立する場合、登録免許税として最低15万円、公証役場での定款認証費用に約3万〜5万円がかかります。
合同会社を選択することで定款認証が不要となり登録免許税も6万円に抑えられますが、いずれにしても法人の実印作成費用や各種証明書の取得費用といった初期投資は避けられません。
また、定款の作成をはじめ、類似商号の調査、資本金の払込証明、登記申請書の作成など、手続きには一定の時間と労力がかかります。
司法書士などの専門家に設立手続きの代行を依頼する場合は、法定費用に加えて数万円から10万円程度の報酬を支払う必要があります。
3.3 複式簿記での決算や確定申告の難易度向上
会社を設立した後は、個人事業主の確定申告とは比較にならないほど高度な会計処理と税務申告が求められます。
法人は必ず複式簿記に基づいて日々の取引を記録し、決算期には貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成しなければなりません。
特に難易度が高いのが法人税の確定申告です。法人税申告書は別表と呼ばれる多数の書類で構成されており、税法の専門知識がない状態での自力作成は極めて困難であり税理士への依頼がほぼ不可欠となります。
個人の青色申告であれば会計ソフトを利用して自身で申告書を作成・提出することも可能ですが、法人の場合は税理士への決算報酬が毎年の必要経費として組み込まれる点に留意が必要です。
記帳作業自体のルールも厳格になるため、日々の経理処理に割く時間が増加し、本業や副業のコア業務を圧迫するリスクがある点もデメリットといえます。
4. 副業の会社設立で本業の勤務先にバレないためのポイント

会社員が副業で法人を立ち上げる際、最も懸念されるのが「勤務先に副業や会社設立の事実が知られてしまうのではないか」という点です。
会社設立の手続きそのものは法務局で行われるため、行政側から勤務先へ直接連絡がいくことはありません。
しかし、設立後の役員報酬の支払いや社会保険の手続きを誤ると、公的機関経由で本業の会社に副業が発覚する原因になります。
勤務先の就業規則に配慮しながら安全に法人を運営するためには、発覚のルートを正しく把握し、適切な対策を講じることが重要です。
| 発覚の原因・ルート | 会社に通知が届く仕組み | 未然に防ぐための具体的な対策 |
|---|---|---|
| 社会保険の二重加入 | 2社以上から報酬を得ると年金事務所から本業先へ通知が届く | 副業法人の役員報酬をゼロ(無報酬)に設定する |
| 住民税額の変動 | 給与所得が合算され本業先の特別徴収税額決定通知書で発覚する | 役員報酬を受け取らず自社内に利益を内部留保する |
| 登記情報・Web公開情報 | 役員氏名が法人登記やインターネット上で一般公開される | 信頼できる家族を代表者に立て自身は株主に徹する |
4.1 役員報酬をゼロに設定して社会保険の二重加入を防ぐ
会社員が自身で設立した法人から役員報酬を受け取ると、原則としてその法人でも健康保険および厚生年金保険への加入義務が生じます。
本業の会社と副業法人の双方で社会保険の加入対象となった場合、年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出しなければなりません。
この届出が行われると、各社で按分された社会保険料の通知が本業の勤務先に送付されるため、確実に副業の存在が知られてしまいます。
この事態を防ぐための有効な手法が、自社からの役員報酬をゼロ(無報酬)として事業を運営することです。
役員報酬が発生しない役員は、健康保険や厚生年金保険の加入対象外となります。
これにより社会保険の二重加入手続きそのものが不要となり、年金事務所から本業の会社へ通知が届くリスクを完全に回避できます。
4.2 自社からの給与を受け取らないことで住民税通知を回避する
個人事業主の副業であれば確定申告時に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」に指定することで発覚を防ぎやすいですが、法人の役員報酬は「給与所得」に該当します。
自治体のルール上、給与所得に対する住民税は主たる給与の支払元である本業の会社でまとめて天引き(特別徴収)される運用が基本となっているため、副業法人の給与を普通徴収に切り替えることは困難です。
結果として、副業分の給与所得が上乗せされた「特別徴収税額決定通知書」が本業の会社に届き、経理担当者に他の社員よりも税額が高いことを不審に思われてしまいます。
したがって、会社設立後も自社から給料や役員報酬の形で個人へ資金を移さず、利益は法人内部に留保させて事業拡大や経費利用に充てる運用が勤務先に知られないための確実な方法です。
4.3 自分以外の家族を代表者にするプライベートカンパニーの活用
法人の登記簿(登記事項証明書)は公的記録であり、法務局やインターネットの登記情報提供サービスを通じて誰でも閲覧が可能です。
代表取締役や代表社員の氏名・住所は法的に登記されるため、同僚や取引先が何らかの契機で社名検索を行った場合、本名から副業法人の設立が判明するリスクが残ります。
このような情報公開リスクを避ける手段として、配偶者など信頼できる家族を代表取締役(代表社員)に据えたプライベートカンパニーを設立し、本人は出資者(株主)として関与する形式が有効です。
株主の氏名は登記簿謄本に記載されないため、外部から本人の関与を特定することは極めて困難になります。
家族が実質的に事業を担える体制を整え、適正な役割分担のもとで運営することで、本業に影響を与えずに法人のメリットを享受できます。
5. 個人事業主と法人の違いを比較して損しない選択をする

副業の事業規模が拡大した際、個人事業主のまま事業を継続するか法人を設立するかは、その後の手残り額や事業の成長スピードを左右する極めて重要な分岐点となります。
税負担や社会保険の仕組み、法人形態ごとの特徴を正しく理解し、自身の事業フェーズに最も適した選択をすることが重要です。
5.1 税金面での負担と控除額の違い
個人事業主と法人では、適用される税率構造や利用できる控除制度が大きく異なります。
個人事業主の所得税は所得が増えるほど税率が高くなる「超過累進税率」が採用されており、住民税と合わせると最高税率は約55%に達します。
一方、法人が納める法人税等は比例税率を基本としており、実効税率は約21%から34%程度にとどまります。
さらに、個人事業主は最大65万円の青色申告特別控除が上限となりますが、法人の場合は役員報酬を支払うことで給与所得控除が適用されるため、一定以上の利益が出ている状況では法人化によって課税対象額を大幅に圧縮できる仕組みになっています。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 課税体系 | 所得税(累進課税:5%〜45%)+住民税(約10%)+個人事業税(3%〜5%) | 法人税+法人住民税+法人事業税(実効税率:約21%〜34%) |
| 主な控除制度 | 青色申告特別控除(最大65万円) | 給与所得控除(役員報酬に対して適用) |
| 赤字の繰越期間 | 最長3年間(青色申告の場合) | 最長10年間(青色申告の場合) |
| 経費の適用範囲 | 事業に直接関連する費用のみ(家事按分が必要) | 役員退職金や社宅家賃、出張手当など幅広く算入可能 |
5.2 社会保険の加入義務と保険料負担の比較
副業として事業を行う場合、社会保険の取り扱いは個人事業主と法人で決定的に異なります。
本業の勤務先で社会保険に加入している場合、個人事業主としての副業所得が増加しても、本業側の健康保険料や厚生年金保険料が増額されることはありません。
しかし、法人を設立して自ら役員報酬を受け取る場合は、すべての法人が社会保険の強制適用事業所となるため、本業と副業の双方で社会保険の加入義務が生じます。
この場合、両社の報酬を合算して保険料を按分計算する手続きが必要となり、会社負担分と個人負担分の双方が発生します。
そのため、副業法人の社会保険料負担を抑えるためには役員報酬の設定額を慎重に判断する必要があります。
| 比較項目 | 個人事業主(副業) | 法人(副業) |
|---|---|---|
| 社会保険の加入義務 | なし(本業の勤務先の社会保険をそのまま継続) | あり(役員報酬を支給する場合、原則として強制加入) |
| 保険料の算定基準 | 本業の給与のみで算定(副業所得は影響しない) | 本業給与と役員報酬を合算して按分(二重複数被保険者) |
| 法人(会社)負担分 | 発生しない | 役員報酬に応じた法定福利費(約15%)の会社負担が発生 |
5.3 株式会社と合同会社の特徴と設立費用の違い
会社設立を選択する場合、主に「株式会社」と「合同会社」のいずれかの会社形態を選ぶことになります。
両者は出資者の責任範囲がいずれも有限責任である点では共通していますが、設立コストや社会的信用度、運営ルールにおいて明確な違いが存在します。
株式会社は認知度が高く、将来的な株式による資金調達や上場を目指す場合に適しています。
一方、合同会社は定款認証が不要で登録免許税も低いため、初期費用を大幅に抑えて設立できます。
BtoBの大手企業との取引や対外的な信頼性を最優先する場合は株式会社が推奨されますが、WebビジネスやBtoCなど認知度を過度に問われない事業であれば設立コストを抑えられる合同会社が極めて合理的です。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立時の登録免許税 | 最低15万円(資本金の0.7%) | 最低6万円(資本金の0.7%) |
| 定款認証手数料 | 約3万〜5万円(公証役場) | 不要(0円) |
| 設立費用の合計目安 | 約20万〜25万円(電子定款利用時) | 約6万〜10万円(電子定款利用時) |
| 役員の任期 | 原則2年(最長10年まで伸長可能・重任登記が必要) | 任期制限なし(重任登記の費用が不要) |
| 決算公告の義務 | あり(官報掲載等で年額約6万円発生) | なし(公告不要でコスト削減可能) |
| 社会的信用・認知度 | 非常に高く、あらゆる取引先や金融機関に通用する | 普及しつつあるが、一部の保守的な企業に対しては説明が必要 |
6. 副業から会社設立を進める具体的な手順

副業として行っている事業を法人化する場合、全体の流れを把握して計画的に進めることで、本業の業務に支障を出さずにスムーズな設立が可能です。
会社設立の手続きは、大まかに分けて「事前準備」「資本金の払い込みと書類作成」「登記申請」「設立後の各種届出」の4つのステップで進めます。
6.1 会社の基本事項決定と定款の作成・認証
会社設立の第一歩として、会社の骨組みとなる基本事項を決定します。
決定すべき主な項目は以下の通りです。
- 商号(会社名):同一住所に同一商号がないか、類似の商標がないかを確認します。
- 事業目的:現在行っている副業の内容だけでなく、将来的に展開予定の事業内容も記載しておきます。許認可が必要な業種の場合は、記載表現に注意が必要です。
- 本店所在地:自宅、賃貸オフィス、バーチャルオフィスなどから選定します。賃貸物件の場合は法人登記が可能か事前に契約内容を確認しましょう。
- 発起人および役員構成:出資者と役員を決めます。副業の場合は自身が1人で作るケースが一般的です。
- 資本金の額:法律上は1円から設立可能ですが、対外的な信用力や運転資金を考慮して設定します。
- 事業年度(決算期):本業の繁忙期を避け、売上の波を考慮して自由に決定できます。
基本事項が決定したら、会社の根本原則を定めた「定款」を作成します。
定款の作成後は、公証役場での認証手続きが必要です。
ただし、定款の認証が必要なのは株式会社のみであり、合同会社の場合は公証人による認証が不要となります。
定款を紙で作成すると4万円の収入印紙代が必要になりますが、PDF形式の「電子定款」を作成して手続きを行えば印紙税が非課税となり、設立コストを削減できます。
6.2 資本金の払い込みと登記書類の準備
定款の認証が完了(合同会社は定款作成が完了)した後は、資本金の払い込みを行います。
この時点ではまだ会社の法人口座が存在しないため、発起人代表の個人口座に資本金の金額を振り込みまたは入金します。
入金後は、以下の情報が確認できるように通帳の表紙、見返し部分、振込内容が記載されたページのコピーを取り、「払込証明書」を作成して綴じ込みます。
インターネットバンキングを利用している場合は、口座名義人や振込履歴が確認できる画面の印刷で代用可能です。
資本金の払い込みと並行して、登記申請に必要な各種書類を準備します。
- 設立登記申請書
- 定款(電子定款の場合はCD-Rなどの記録媒体または送信データ)
- 発起人の決定書
- 役員の就任承諾書
- 役員の印鑑証明書
- 印鑑届出書(法人の実印として法務局に登録する印鑑)
- 払込証明書
6.3 法務局への設立登記申請と登記簿謄本の取得
書類の準備が整ったら、本店の所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請します。
登記申請を行う方法は、法務局の窓口へ直接提出する方法、郵送による提出、専用ソフトやマイナンバーカードを用いたオンライン申請の3種類があります。
法務局に登記申請書を提出した日(オンラインの場合は受付された日)が会社の「会社設立日」となります。
希望する設立日(大安や記念日など)がある場合は、法務局の開庁日(平日)に合わせて申請日を調整しましょう。
登記申請後、通常1週間から10日程度で審査が完了し、登記が完了します。
不備がなければ法務局から連絡は来ないため、予定日以降に以下の書類を取得しに行きます。
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書):法人の登記簿謄本にあたる書類です。銀行口座の開設や官公庁への届出で複数枚使用します。
- 印鑑カードおよび法人の印鑑証明書:法人の印鑑証明書を発行するために必要な印鑑カードの交付を受け、併せて印鑑証明書を取得します。
6.4 税務署や年金事務所など各官公庁への届出
登記完了後は、速やかに各官公庁へ法人設立の届出を行わなければなりません。
提出先ごとに期限や必要書類が異なるため、漏れのないよう計画的に手続きを進める必要があります。
| 提出先の機関 | 主な提出書類 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 税務署 | ・法人設立届出書 ・青色申告の承認申請書 ・給与支払事務所等の開設届出書 ・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 設立の日から2ヶ月以内 (青色申告は設立日以後3ヶ月を経過した日または事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで) |
| 都道府県税事務所・市区町村役場 | ・法人設立届出書 | 自治体により異なる(設立日から15日〜1ヶ月以内が一般的) |
| 年金事務所 | ・健康保険・厚生年金保険新規適用届 ・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 事実発生から5日以内(役員報酬を支給する場合) |
| 労働基準監督署・ハローワーク | ・労働保険保険関係成立届 ・雇用保険適用事業所設置届 | 従業員を雇用した日の翌日から10日〜50日以内 |
特に税務署への「青色申告の承認申請書」は、赤字の繰越控除や各種税制上の優遇措置を受けるために極めて重要ですので、法人設立届出書と一緒に必ず提出しましょう。
また、役員報酬を支払う場合や従業員を雇う場合は、社会保険や労働保険の加入手続きも忘れずに行ってください。
この記事では、個人事業主との違いやメリット・デメリットを比較し、プライベートカンパニーの具体的な作り方を5つのステップで…
7. まとめ
副業での会社設立は、年間所得800万円または売上高1,000万円を超えて安定した黒字が見込めるタイミングが最適な判断基準となります。
法人化により高い節税効果や経費枠の拡大、社会的信用の向上といったメリットが得られる一方、赤字でも生じる均等割などの維持コストや決算手続きの手間がデメリットとなります。
本業への対策として役員報酬の設定などを工夫しつつ、個人事業主との損得を冷静に比較した上で適切な会社設立手続きを進めましょう。
